敢闘編
第五十七話 思惑 T
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先輩、私の順番で回っている。
参謀の皆は、総参謀長、ハフト准将、ギャバン准将、ロックウェル准将、ウィンチェスター、の順で回っている。年が明けるまでは皆緊張した面持ちで配置に就いていたものだが、年が明けて新年を祝うパーティーが終わった後はその余韻が抜けきらないのか、緊張感も今一つ、といった所だ。何しろイゼルローン要塞を奪取し、アムリッツァ星系に進駐した後だ。パーティーの盛大さはとんでもないものだった。本国では、年を越した真夜中に政府がイゼルローン要塞奪取とアムリッツァ進駐の公式発表を行ったものだから、近年希に見る大騒ぎの年越しとなったという。ハイネセン記念スタジアムでニューイヤーイベントが行われたのは例年通りだったが、政府の公式発表の後から更に市民が集まりだして、最終的にはおよそ百万人もの人がスタジアムの周囲に集まって同盟国歌の大合唱が始まり、その大合唱に釣られてスタジアム内の群衆も唱和し出してニューイヤーイベントどころではなくなって、それが延々二時間近く続いたそうだ。そして同様の光景は政府施設、特に最高評議会ビルと統合作戦本部ビルでも見られ、市街地のあちこちで自然発生的に市民によるパレードが始まり、乱闘騒ぎ、強盗、火事まで起きる始末だったという…。
「先程から何を読んでいるんです?…銀河連邦建国史…面白いですよね、それ」
現直のペアはウィンチェスターだ。私の本を見てウンウンと頷いている。
「ちょうど今ラグラン・グループ結成のくだりなんだ。わくわくするよ」
「チャオ・ユイルンとか、ヤン中佐にそっくりじゃないですか」
「え、そうかい?私より君に似ているんじゃないか?」
「そうですかねえ」
「…ところで、君はこの先をどう予想するんだい?」
ウィンチェスターは腕を組んで考えている。彼の頭の中はどうなっているんだろうか。一度覗いてみたいものだ。
「中佐は、どうお考えです?」
「質問したのは私なんだが…まあいいか。やはり講和ではないかと思うんだが」
「講和ですか…」
「前に君が言っていただろう?帝国の宗主権を認めた上での講和。まあ降伏に近い形だし、どう同盟市民に説明するかが難問だが」
「ですが…我々の降伏を主張したとしても、帝国にとってはやはり我々は共和主義者、政治犯、という事は変わりません。何年後、何十年後かも知れませんが、国力を回復した帝国が攻めてきますよ。同盟もある程度は国力を伸長させているでしょうから、また長い間戦う羽目になりませんか?」
「だが、一時的な平和は得られるだろう?人類の歴史に恒久的な平和というものは無かったし君の言う様にまた戦争になるかも知れない。だが、このまま戦争が続くより余程ましじゃないか?」
「そうですかねえ…なんか無責任な気がするんですが」
ウィンチェスターは真剣な顔をしている。無責任?無責任なのだろ
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