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TARI TARI +TARA
飛び出したり 誘ったり 飛びかかったら その4
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「あっ、しまった……ごめん!」

突然、高橋先生が何かを思い出したように引き戸の向こうに声をかけた。
教室中の興味が疑問符と共にそちらに向いたのは、また必然といえただろう。




衛太郎の脳内は混沌としていた。
朝っぱらから何を馬鹿なことをーー他人からそんな感じのことを言われても仕方ないかもしれない。だが、こればかりはわかってほしい。……いや、深く考えれば納得できるであろうことだとは思うが、出来れば信じたくはなかった。

(……マジか。マジなのか)

「オーストリアからの帰国子女だから、みんないろいろと教えてあげるようにね」

「はーい」という生徒たちの元気のいい返事に参加しないのは、衛太郎(あと、おそらく和奏)だけ。
それもそうだろう。高橋先生に紹介されたその転入生はーー今朝道案内したばかりの、あの意味不明な爽やか系の少年だったのだ。
黒板に名前を書いた彼は、こちらを振り向く。

(あ……)

気づいた時には、もう遅かった。少年の目が、衛太郎にばっちりと向けられていたのだから。
にこっ、とこれまた嬉しそうに爽やかな笑みを向けてくれる。
産休を控えた担任がそれを目ざとく見つけたのを、衛太郎は見逃さなかった。
ああー、嫌な予感が……。
そんな気も知らず、転入生は自己紹介を続けていく。

「十二年ぶりに帰って来た日本に、早く馴染めるよう頑張ります。今は本しか友達のいない僕ですがーー」

転入生はそこまで言うと、急に表情を真面目なそれへと引き締める。
そして、教室中の全員が見守る中で、身を屈めた。

「どうか皆様……よろしくお願い申し上げます」

そう告げると同時に床に膝をつき、更に頭を深々と下げる。
それは日本では良く知られた礼法の一種だったが、この場ではどう考えても場違い極まりないものだった。
おかげで歓迎ムードだった空気が一気に丸めて窓の外へと投げ捨てられるように切り替わり、意味不明の静寂に包まれる。

「……土下座?」

来夏の静かなツッコミの直後、ホームルーム終了のチャイムがどこか虚しく鳴り響いた。






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