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TARI TARI +TARA
飛び出したり 誘ったり 飛びかかったら その4
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(どうして、こうなったんだろうか……)

だんだんと登校してきた生徒も多くなってきた時間帯に入った頃、衛太郎はそう思っていた。
いつもなら、もう衛太郎も教室にいる頃なのだが、今日は違った。
こうやって未だに廊下を進んでいることもそうだが、一番の違いは、後ろから着いてくる人物にあった。

「………………」

こちらの視線に気づいた彼は、またあの柔和な微笑みを向けてくる。少年の爽やかな印象に更に拍車がかかるが、衛太郎には苦笑いしか返せない。
先ほど、下駄占いを道占いと称して堂々と間違えてくれた彼を一人で職員室に行かせるのもなんだか気が引けてしまい、現在こうして道案内中ということだ。
未だに素姓の知れない少年だったが、多少ズレているだけで悪い人ではなさそうだ。

(とにかく、早く連れて行ってあげてから教室で課題を終わらせるか……)

そう考えてポケットに手を突っ込んだ時、さっきまで後ろにいた少年が自分の隣へと進んできた。

「すいません。こんなことまでしてもらって」

「い、いえ……別にこのくらいなんてことないですよ……」

下手な愛想笑いで返した衛太郎に、少年はわざわざ足を止めて頭を下げてくる。いかにも大げさなその謝罪に戸惑ったが、すぐに再び歩き出してくれたので内心でほっと息をつく。
その後も何か起こらないかと過剰にハラハラしていた衛太郎だったが、不安とは裏腹に、何事もなく職員室に着くことができた。

「えっと、ここが職員室なんで……あとは大丈夫ですか?」

「はい。ーーどうも、ありがとうございました」

ぱんぱん。まるでお参りの時にするように、丁寧に手を合わせて拝まれた。
やっぱり、この人はちょっとーーいや、大分ズレている。
自分には予定が詰まっていることだし、後は先生に任せておけば大丈夫だろう。ひとまず適当に生返事をして、そのまま振り返って教室へ向かおうとした。

「あっ。ちょっと待ってください。最後に、お名前だけでも聞かせてください」

「な、名乗るほどのものじゃないんで……」

何年か前のドラマのような展開に感化されてしまったのか、衛太郎は早口にそう言ってから足早に廊下を歩いて行った。
あとになって、正直に名乗っていた方が普通だったのではないかと思った時には、妙なノリに乗ってしまった恥ずかしさと後悔のダブルパンチでため息をついたのは余談である。










(はあ。なんかどっと疲れた……)

人ひとり案内しただけだというのに、いつもの倍ほどの労力を使ったような気がする。
気を取り直してたどり着いた教室に入ると、すでに中には半分以上の人数の生徒が来ていた。何時の間にか、それなりの時間が経っていたらしい。みんな黒板に高橋先生
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