第七十二話 満ち足りた夏休みその十
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「一体」
「だから小山さんも最初からよ」
「そんなところは行かないことですか」
「本当にブラックになるととことんだから」
それこそというのだ。
「酷いから」
「だからですね」
「最初からね」
「入らないことですか」
「見極めて」
そうしてというのだ。
「入らないことよ」
「最初からですね」
「そうよ、ブラック企業はね」
「最初から近寄らない」
「悪人と一緒よ」
「ああ、そういうことですか」
悪人と聞いてだ、咲も頷いた。
「ブラック企業は」
「悪人とよ」
まさにというのだ。
「同じよ」
「そう考えるといいんですね」
「実際に悪人がやってるから」
その経営をというのだ。
「それでよ」
「人をこき使ってですね」
「搾り取るのよ」
「そうするんですね」
「そうよ」
こう咲に話した。
「そして自分はよ」
「肥え太る、ですか」
「そうなるのよ」
「自分が儲ける為にですね」
「その為によ」
「人を利用するんですね」
「悪とは何か」
先輩はこうも言った。
「それはね」
「あっ、私も知ってます」
悪とは何かと聞いてだ、咲はある漫画を察して言った。
「自分の為に人を利用する」
「そうした奴こそね」
「悪ですね」
「それよくわかったわね」
「ある漫画で言われてました」
咲は自分がよく知っている漫画の話からした。
「奇妙なのシリーズです」
「ああ、あのシリーズね」
「ご存知ですか」
「有名だからね」
このシリーズはというのだ。
「凄いわよね」
「絵もキャラもストーリーも」
「物凄いわよね」
「あのポーズなんか」
咲は笑顔で応えた。
「いいですよね」
「あの人は天才よね」
「そう言っていいですよね」
「はい、あのシリーズで言われてまして」
「私も読んでるけれどあったのね」
「第三部で」
この時にというのだ。
「その時の主人公が言ってました」
「エジプトまで行くお話ね」
「そうです」
「そうだったのね、忘れてたわ」
「長い作品ですからね」
何しろ週刊月刊合わせて三十年以上に及ぶ、壮大かつ見事な作品世界がそこまで続いているのである。
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