第十二話 ジェーン=グレンの処刑その十四
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健であり常に身体を鍛えていた。その為実際にああした仁王像そのままの身体を持っていたのだ。あの像は何もないところから生まれたのではないのだ。
「じゃあ日本風も」
「いいんじゃないかな」
「とにかく写実的だね」
和典は言った。
「そうした像を考えているよ」
「人の身体を彫りたいんだね」
「そうなるね。やってみるよ」
「いいね。じゃあお互いにね」
「うん、頑張ろうね」
「芸術は。美は癒しだよ」
またこう言う十字だった。顔には感情はないがそれでも言ったのだった。
「この世で最も素晴らしいね」
「じゃあ僕もこれから彫刻を彫って」
「うん、癒されるべきだよ」
和典はそうあるべきというのだ。そしてだった。
十字は描きながらだ。こうも言ったのだった。
「そして彼等もね」
「彼等もって?」
「いや、何でもないよ」
十字は彼等が誰なのかは言わなかった。さっと隠したのだった。
そうして隠し見えない様にしてからだ。和典にあらためて述べた。
「ではね」
「うん。お互いに頑張ろう」
和典は芸術、そして美だけを見ていた。だが十字は違っていた。彼は今描いている処刑を前にした少女の嘆きを観ながらそれ以外のものを見ていた。人の心にある美とはまた別のものを。醜さとはまた違うそれを見ていたのである。その先にあるべきものも。
第十二話 完
2012・4・18
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