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どうしても食べたい
第二章

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「やるならいいわよ」
「やるに決まってるだろ」
 強い声で言ってだった。
 夫は家を出てスーパーまで買いに行ってだった。
 家に戻ると鍋に水を入れて沸騰させてそこにスパゲティを入れて茹でて大蒜を刻んで炒めてソースを温めた。
 スパゲティが茹で上がるとだった。
 キッチンの水槽に置いてあったざるの上にスパゲティを入れて湯切りをして鍋に戻してからだった。
 大蒜を入れてオリーブオイルをかけて絡めてだった。
 イカ墨のソースをかけて皿に乗せて食べると。
「美味いな」
「そうなの」
「ああ、かなりな」
 こう言うのだった。
「食いたかったしな」
「それは何よりね」
「ああ、しかしもう皆食ったんだな」
 傍でくつろいでいる妻に言った。
「オムライス」
「あんたがお買いもの行って作ってる間にね」
「作って食ったんだな」
「そうよ、それであんたとしては」
「ああ、今な」
「イカ墨のスパゲティ食べたくて」
「それで食えてな」 
 それが適ってというのだ。
「満足だよ」
「そうなのね」
「ああ、だからな」 
 彼はさらに言った。
「満足だよ」
「そうなのね」
「じゃあ食ったらな」
「後片付けするのね」
「そうするよ」
「そこまでして食べたかったのね」
「人間こうした時があるだろ」
 イカ墨のスパゲティをさらに食べつつ話した、口の周りはそのイカ墨で黒くなっているが構わなかった。
「あるものがどうしても食いたい」
「確かにそんな時あるわね」
「それが今でな」
 それでというのだ。
「俺は食ったんだ」
「そうなのね」
「だから後片付けもな」
「するのね」
「そうするな、本当に食えて満足だよ」
 夫は笑顔で言った、イカ墨だけでなくオリーブと大蒜も利いたスパゲティはアルデンテでもあってだった。
 実に美味かった、彼は今とても満足していた。それで後片付けをした後もこの日はずっと上機嫌だった。どうしても食べたくなったものを食べられたので。


どうしても食べたい   完


               2022・10・29
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