第三十五章 あなたの作る世界なら
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虚ろな表情をしている。
たまに、はっと我に返るのだが、だけどすぐにどんより沈んだ暗い表情になり、そのまま虚ろな顔になって、そうなるとまたしばらくそのままだ。
カズミのことである。
別に、怪我の影響で意識が飛んでいるわけではないだろう。
身体はもう、少なくとも怪我は癒えている。
一時は傷に打撲に全身の骨は粉々になって、さらには胴体を皮一枚残して切断されるという即死で不思議のない大怪我を負った彼女。瀕死状態から自分の魔法で応急処置し、加えてアサキに強力な治療を施して貰ってなんとか回復したものだ。
だけど、体力はまだほとんど回復していない。
それ以上に、心の傷は微塵も癒えていない。
当たり前だ。
だって……
そばにいる、赤毛の少女を見る。
赤毛の少女、アサキはえっくひっくと声にならない声で泣いている。拭っても拭っても溢れる涙を、ぼろぼろこぼしながら泣いている。
もうずっと、この調子だ。
たまに虚ろから我に返るカズミは、そのたびその姿に申し訳なさそうに小さくなってしまう。
「……治奈を殺したの、あたしだ」
自責の言葉は何度目だろうか。
カズミは頭を抱える。
「ち、ちが、カ、カズミちゃんは、わる、悪く、ない、じっ、じっ、自分、せめっ責めない、で」
その都度アサキが、泣きながら、しゃくり上げながら、否定をする。
優しいやつなのだ。
この、赤毛の女は。
あたしの、最高の親友は。
でも、悪くないわけがない。
誰が一番ということなく悪いのはあたしだ。
考えるまでもない。
カズミは思う。
だってそうだろう。
手負いの至垂を追う提案をしたのは他でもない、あたしなんだから。
シュヴァルツたちは生体ロボットで行動制限が掛かっているため、超次元量子コンピュータの管理領域へと踏み入ることは出来ないし、例え遠隔であろうともとにかく直接的な危害を加えることが一切出来ない。
対して、魔法という奇跡からこの現実世界に誕生したあたしたち三人、それと至垂のクソ野郎いやクソ女には、そうした行動制限はない。
つまり至垂は、この人工惑星を破壊することも出来るってわけだ。
神になるのが目的なのにそんなことをするか? とアサキはいっていたけど、そんなの分からないじゃねえか。
闇の世界に狂って自暴自棄になるとか、破壊をやめる交換条件にこちらを脅してくるとか。
宇宙延命を阻止して消滅させようとしているシュヴァルツと、もしも手を組まれなどしたらどうなるか分からないじゃねえか。
だからあたしは、逃げる至垂を追ったんだ。
正確にいうと、死んだと思っていたら姿がなくて砂に残った移動の痕跡を追った。
ア
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