第三十五章 あなたの作る世界なら
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れに、分散ということは自分にもその能力が眠っているということ?
そう思って、カズミは尋ねたのである。
「さっきもいいましたが、カズミさんと治奈さんは別に必要ではない存在です。アサキさん一人で充分です」
「確かに、いってやがったな」
「でも、どうせ余計な人物まで転造されてこちらへくるのならば、アサキさんの持つ膨大な魔力や素質は分散させた方がより安全確実である。と、ロードバランサーが自動で働いたのでしょう」
「いちいち腹立ついい方。……じゃあさ、あたしもいま強いってわけか? あたしも、アサキの力の一部を持っているわけだろ」
「秘める能力は、アサキさんにしか認識されません」
「そっか」
残念がるカズミ。
「治奈さんは、念の強さから使ってしまった。それ自体、ある種の奇跡が起きたといえるでしょう。ですが、結果はあの通りです」
内に秘めた力を制御できず、身体を崩し、四肢を失いながら、最後には自分の魔法で吹き飛んで死んだのだ。
「やっぱりアサキじゃなきゃ、ってことか。ああ、でもなんかやべえこと起きてピンチになったら、あたしがわざと死にゃあそれでアサキが無敵にパワーアップするわけだ」
「カズミちゃん、冗談でもそんなこといわないで! 怒るよ!」
いきなりアサキが激しい形相で怒鳴った。
それはアサキらしからぬ怒鳴り声、アサキらしからぬ心底怒った険しい顔であった。
「ごめん」
カズミは、素直に謝るしかなかった。
不謹慎な冗談を。
珍しく友へと怒鳴ったアサキであるが、ふっと笑むと、静かにカズミへと抱き着いて、腕を回して抱き締めていた。
そして、優しい声でいう。
「強くなんかないよ、わたしは。でも、もしも強くなれたとしてもね、強い一人よりも、弱い二人の方が絶対にいいよ。きっと、その方がずっと強くなれる」
「お前は最強だろうがよ。一人も二人もあるか」
「空手じゃ師匠には勝てないよ」
アサキは腕を緩めて少し距離を取ると、師匠の顔を見ながらクスリと笑った。
「そりゃそうだ。負けねえよ」
師匠も強気な笑みを返し、そのまましばらく見つめ合っていると、
「いいですね、あなたたち二人の関係は」
ヴァイスがぽそっと言葉を掛けた。
表情をまったく変えず、相変わらず涼やかな顔のままで。
「二人、だあ?」
カズミは、ぎろりヴァイスを睨み付けた。
「ああ、すみませんでした。アサキさん、カズミさん、治奈さん、の三人ですよね」
「わたしは、ヴァイスちゃんともそうなれたら、嬉しいな」
アサキの素直な言葉に照れたのだろうか。
ヴァイスが、口を閉ざしたまま黙ってしまったのは。
だけど、
どれくらい、経っただろうか。
いつも薄い
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