第三十五章 あなたの作る世界なら
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時は今と発動させたのだ。
カズミを中心に、アインス、ツヴァイ、ドライの身体も完全に五芒星の中に入っている。
「く」
アインスが忌々しげに呻く。
三人とも、動こうにも動くことが出来ずにいる。足がぴたり地面に張り付いているためだ。魔法陣によって呪縛されているためだ。
だが、
「児戯に等しい!」
アインスが、右手に握った白い光の剣をなにかを断ち切るように振り下ろすと、途端に魔法陣の輝きが鈍くなった。
それはつまり呪縛が弱まった、ということなのだろう。三人は、白い光の剣を地へ、魔法陣へと叩き付けて、その勢いを使って大きく跳躍したし、呪縛陣の支配下からあっさりと逃れることに成功した。
「だろうな」
通じないことは分かっている。
だが、その一瞬の足止めでカズミには充分だった。充分もなにも、こうなるように仕向けたのだから。
カズミは残る片足で強く地を蹴り、大きく飛んでいた。
飛翔魔法も発動させて、大きく、高く、瞬きのうちにアインスたちを追い抜いた。
白い光を輝き放つカズミの身体が、さらに白く、白く、白く、輝いていた。凝視に耐えないほどに、すべてを溶かすほどに、明るく、眩く。
くるり身体を前転させながら軽く天を蹴ると急降下。超魔法の呪文を唱えながら、三人へと突っ込んでいった。
直後に起きたこと、それは超新星をも凌ぐ激しい光の放出と、万物すべてを吹き飛ばすかのような大爆発であった。
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ふわふわと、浮いていた。
カズミの身体、いや、意識? 感覚の中に漂いながら、考えていた。
死ぬんだな。
あたし。
直感ではなく、事実として、現実として、これからそうなることを受け止めていた。
まあ、いいや。
疲れたよ、あたし……
悪いけど、後のことは任せたからな……アサキ。
すべてを解決して、そして、いつか復活した宇宙に新たな世界を築くことを。
どんな世界になるのか、あたしに分かるはずはないけど、でも、お前が作る世界なら、きっと誰もが幸せになれるよ。きっとね。
信じている。
一人きりに背負わせちゃって、悪いとは思うけど、でも、ごめんはいわねえぞ。
だってこれ、笑顔の報告だから。
あたしの、心からの、笑顔の。
でも、もう会えないのは、ちょっと寂しいなあ。
すべての思い。
過去。
希望。
すべてが真っ白な光の中に集束したかと思うと、溶けて闇の中へと消えた。
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