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展覧会の絵
第十一話 ノヴォデヴィチ女子修道院のソフィアその十六
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「生きたまま首を刎ねられてるな」
「それも何だ、この切り口」
 警官達がその首を手に取り切り口を見た。それはだ。
 奇麗なものではなかった。ぎざぎざとしていた。その切り口はだった。
「鋸だな」
「おい、鋸引きかよ」
「そんなえげつない殺しかよ」
「まだ刀ですっぱりじゃないんだな」
 その殺し方もだ。多くの殺し方を見ている彼等が見てもだった・
 おぞましいものだった。それでこう言うのだった。
「悪魔かよ。こんなことしたのは」
「人間のやり方じゃないだろ」
「わざと。苦しませて殺すか」
「本当にとんでもない奴だな」
「悪魔じゃなかったら何だ?」
 人間とさえだ。思われなくなってきていた。
「今回は何人殺されたんだ」
「十人程度です」
 若い警官が先輩達に敬礼で答えた。
「それだけの人間がです」
「一気に殺されたのか」
「それもここまでえげつなく」
「そうです。恐ろしいことですね」
「本当に切り裂きジャックじゃないのか?」
 こんな言葉も出て来た。
「あれも一瞬で無茶苦茶な殺し方してたけれどな」
「ああ、そうらしいな」
「いや、あいつは流石にもういないぞ」
「あいつがいたのは十九世紀だぜ」
 今は二十一世紀だ。それではだった。
「それで生きてる筈ないだろ」
「それは流石にないぞ」
「それもそうか」
 言った本人も周りの言葉を受けて頷いた。
「十九世紀の人間が今生きてる筈ないよな」
「まあ悪霊とかになって日本に来てるとかな」
 今はどうしてもだ。そうした非科学的、少なくとも警察官であれば表向きは否定しなければならない話にもなった。実際には科学とてこの世のものであるが故に万能ではないが。
「ロンドンからはるばるな」
「そんな感じだよな」
「少なくともな」
 どうかというのだ。私服の刑事が言った。トレンチコートが如何にもという感じだ。
「この事件、犯人の手掛かりからだな」
「そうですね、まずはですね」
「そこから見つけないと」
「本当に切り裂きジャックみたいな奴だな」
 刑事もだ。この謎の連続猟奇殺人鬼の名前を出した。
「影も形も見えないってのがな」
「ですよね。ただ、犯行文とかはまだですね」
「全く送ってきてませんね」
「今のところはですが」
 制服の警官達が刑事にこう話す。切り裂きジャックはスコットランドヤード、ロンドンの治安を司る彼等に対してそれを送ってもいるのである。彼等が言うのはこのことなのだ。
「そのうち送ってくるでしょうかね」
「そうしてきますかね」
「ジャックそのものならな」
 切り裂きジャック本人、今は生きている筈のない彼ならというのだ。

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