第十一話 ノヴォデヴィチ女子修道院のソフィアその十二
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それでだ。また言うのだった。
「証拠は残していないので」
「ならいいがな」
「それ程気になりますか」
「私はこの塾の高潔な理事長だ」
表向きはそうなっている。あくまで表向きはだ。
「誰にも姿を見せないな」
「そうですね。ドラッグの類は一切知らない」
「そして生徒を愛している」
表向きの顔だ。彼はあえて謎を装っているのだ。だが、なのだ。
その彼は今は本来の顔でだ。こう言うのだった。
「だからだ。暴力団なぞはだ」
「一切知らないですね」
「藤会、聞いたこともない」
そういう設定だった。彼の表は。それを実際に言ってみせたのである。
「ではだ。証拠はないのだな」
「全くです」
「よし、ではその店からどう手に入れるかはだ」
「考えますか」
「そうしよう。やはり雪子か」
「あの娘を使いますか」
「雪子は頭がいい」
このことは確かだった。雪子は由人から見ても一郎から見てもだ。頭の回転が早く機転が利くことで知られている。それでなのだった。
「あの四人よりもな」
「確かですね」
「しかし足がつかないようにしなければならないな」
「はい、それは絶対に」
「どうにかするべきだ」
難しい顔で述べる由人だった。自分達の悪に対して。
「さもないと薬が手に入らなくなる」
「他にもルートはありますが」
「ではマフィアを頼りにしますか」
「どうだろうな。一応あたってみてくれるか」
「はい、そちらも調べてみます」
「頼んだぞ。私はここから動かないからな」
「それでは」
こう話してだった。彼等はこれからの彼等の悪事を考えていた。悪事もまた計画が必要だからだ。それ故にしっかりと話して考えていたのだった。
しかし彼等は誰も彼等の話を聞いていないと思っていた。だがそれは違っていた。盗聴器、そして隠しカメラからその話を見聞きした十字は教会においてこう神父に言った。
「相変わらずだね」
「その様ですね」
「悪は悪だよ」
全てを見聞きし終えてからだ。こう神父に述べたのだ。
「それも邪悪だよ」
「しかも枢機卿が聞かれていることにはですね」
「気付いていない。全くね」
「この国の諺ですが」
ここで神父はこんなことをだ。十字に言ってきた。
「壁に耳あり障子に目ありといいます」
「秘密はばれるということだね」
「特に悪によるものは」
古来より日本で言われている諺だった。
「そうなります」
「だからこそ彼等の悪は僕達が知ることになった」
「そうかと」
「そうだね。さて、彼等が話している店だけれど」
「察しはつきます」
この町にいるだけあってだ。神父の返事は早かった。
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