第十一話 ノヴォデヴィチ女子修道院のソフィアその八
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「ですが。先輩達の天秤は善に傾いています」
「俺達は悪人じゃない、か」
「そうだってんだな」
「はい」
その通りだというのだ。
「神はそう判断されています」
「まあ俺達別にキリスト教徒じゃないけれどな」
「俺もだよ」
「ああ、俺もだ」
「俺の家神社だからな」
先輩達は誰もキリスト教徒ではなかった。だから十字の今の言葉は今一つ実感の湧かないものだった。だがそれでもだ。十字の言葉にはある程度だが頷けたのだった。
「だったらいいけれどな」
「俺達は悪人じゃないか」
「あんな殺され方しなくていいんだな」
「そうならなくて済むんだな」
「そうです」
また答える十字だった。
「ですから御安心下さい。裁かれるのはです」
「悪人か」
「悪人だけか」
「天秤が悪に完全に落ちた者だけです」
また天秤だった。その神が持っている。
「その者に対してだけですから」
「だといいけれどな」
「俺達はそうならないとな」
「ですから大丈夫です」
十字は先輩達にはこう言えた。
「天秤は大きく善に傾いています」
「そうか。じゃあこれからも適当に真面目に生きるか」
「そうしような」
彼等は十字の言葉に少しほっとしてそうしてだ。互いに顔を見合わせて笑って話した。
そしてだ。彼等は今度はこうも言った。
「それでだけれどな」
「まあ今警察大騒ぎになってるっぽいな。当たり前だけれどな」
「警察ですか」
警察と聞いてだ。十字はまた言った。
「日本の警察は優秀と聞いていますが」
「イタリアの警察と比べてどうなんだ?」
「優れていると思います」
先輩の一人の質問にも答えたのだった。
「イタリアではマフィアは日本の暴力団以上に跳梁跋扈しています」
「ってそんなに酷いのかよ」
「日本以上かよ」
「比べものになりません。それにです」
「それに?」
「それにっていうと?」
「マフィアだけではありません」
イタリアの裏を牛耳っているのは彼等だけではないというのだ。その悪名高きマフィアだけではないというのだ。十字は先輩達にこのことも話していく。
「カモラという系列もありまして」
「カモラ?何だよそれ」
「またおかしな名前だな」
「簡単に言うとマフィアと同じです」
結局のところだ。彼等も犯罪組織だというのだ。
「ただ。マフィアがシチリア系なのに対してカモラはナポリ系です」
「ああ、出身地が違うのか」
「そうだってんだな」
「そうです。行いは変わりません」
つまりルーツが違うだけでだ。ほぼ同じ組織だというのである。
「あまりいい組織ではありません」
「だろうな。ヤクザ者
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