第十一話 ノヴォデヴィチ女子修道院のソフィアその七
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「けれどなあ。えげつないよな」
「もう獣が暴れ回ったみたいだってんだからな」
「二十人もバラバラになってるらしいからな」
「事件現場は血の海で内臓とか飛び散っててな」
「無茶苦茶らしいからな」
「そうですね」
らしいという表現もだ。十字は使わなかった。
「それが神の裁きです」
「御前厳しいっていうかきついな」
先輩の一人があくまで淡々と言う彼に突っ込みを入れた。
「悪い奴等がそんな殺され方しても当然だっていうんだな」
「僕はそう考えています」
「裁判官みたいっていうかな」
その先輩はそうした十字の言葉を聞いてだ。そして言ったのだった。
「悪人はそうなってもいいんだな」
「神は確かに慈愛に満ちています」
十字は神の愛を否定はしていなかった。むしろ肯定していた。
だが肯定と共にだ。彼はこうも言ったのである。
「しかし救いのない。心の奥底まで邪悪に染まった輩はです」
「ああなるっていうんだな」
「惨たらしく処刑されるってのか」
「処刑。そうですね」
十字は先輩の一人のこの言葉にも反応を見せた。反応は見せてもそれでもだ。そこには表情は一切なくそのうえでだ。仮面の様な顔で答えたのである。
「そうなりますか」
「悪人は裁かれてか」
「処刑されるんだな」
「例え司法を誤魔化せてもです」
人間の表の世界、それをどうにかできてもだというのだ。
「神の目は誤魔化せませんかな」
「怖いな、おい」
先輩の一人が十字の言葉をここまで聞いてだ。そして言ったのだった。苦笑いと共に。
「神様ってのは悪人を見逃さないってんだな」
「悪自体をです」
「その悪をかよ」
「善と悪は天秤の関係にあります」
今度はギリシア神話的な言葉だった。ギリシア神話はキリスト教にも影響を与えている。ダンテの神曲の地獄にもそれははっきりと出ている。
「そしてその悪が重ければです」
「ああ、それでか」
「悪の方に落ちたらか」
「はい、神は裁かれます」
天秤もだ。神が持っているものだというのだ。
「そうされるのです」
「で、あの連中は裁かれた」
「それで処刑されたってんだな」
「そうなったのです。これは彼等だけではありません」
そのだ。ヤクザ者達だけではないというのだ。
「他の悪人達もです」
「じゃあ俺達もか?」
「悪事を繰り返したらああなるってのか?」
「首飛ばされたり内蔵引き摺り出されたり」
「そうして殺されるってのか」
「そうなります。ただ」
しかしだとだ。ここで十字は先輩達、その彼等を見て言った。
「先輩達は大丈夫です」
「俺達は悪人じゃないってのか?」
「そうだっての
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