第一章
[2]次話
たゆたう心
周恩寺弘子は今自分に呆れていた、それで友人の龍崎古奈美にこんなことを言った。丸い顔と目で赤い小さな唇と整った眉を持っている。黒髪を短くしていて背は一五三程だ。
「自分で自分で呆れることってあるのね」
「いや、それはないでしょ」
古奈美はすぐにこう返した、切れ長の大きな奇麗な目に黒の腰までのロングヘアに顎の先が尖った顔と一六〇程の背のすらりとしたスタイルの持ち主だ。
「自分自身にって」
「それが今ね」
「あんたはなの」
「そうなの」
喫茶店で向かい合ってコーヒーを飲んでいる古奈美に話した。
「これがね」
「そんなことあるのね」
「ええ、今そのことがわかってね」
それでというのだ。
「呆れると共にね」
「戸惑ってるみたいね」
「そうよ」
その通りだとだ、弘子は答えた。
「どうにもね」
「呆れていること自体に」
「全く。何でこうなったのかしら」
弘子は溜息混じりにこうも言った。
「本当に」
「何があったか教えてくれる?」
古奈美は溜息を出した弘子に問うた。
「一体」
「話しても怒らない?」
「犯罪だったら警察を勧めるわ」
「それじゃないから」
犯罪の可能性は否定した。
「警察はいいわ」
「だったわいいわ、それでどうしたの?」
「実は部長さん好きになったのよ」
弘子は会社の上司の話をした。
「私ね」
「えっ、部長さんって置鮎部長?」
「そうよ、私達の上司のね」
驚く古奈美にその通りだと答えた。
「あの人よ」
「あの、部長さんって」
古奈美は白いものが混ざってきている黒髪をオールバックにして長身で引き締まった身体と面長の端整な顔を持つ社内きっての温厚な紳士として知られる彼のことを話した。
「結婚されてるわよ」
「それも愛妻家でね」
「娘さんおられて」
そしてというのだ。
「その娘さんもね」
「随分可愛がっておられるわね」
「あの人好きになったら」
古奈美は強張った顔で述べた。
「駄目よ」
「絶対によね」
「家庭持ってる人はね」
「その家庭壊して」
「不倫でいい結末なんてないわよ」
古奈美はこうも言った。
「人の家庭壊して幸せになれる筈ないでしょ」
「悪いことしてね」
「だからね」
「部長さん好きになったら駄目ね」
「何があってもね」
「それがわかっているから」
自分でもとだ、弘子は答えた。
「私も自分に戸惑って」
「呆れてるのね」
「そうよ」
その通りだというのだ。
「本当にね」
「そう思うならいいわ」
それならとだ、古奈美は弘子に述べた。
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