第三章
[8]前話
「ですから若し願いが叶うならです」
「死ぬ時も一緒でいたいです」
「そして二人がこの世を去っても」
「共にいたいです」
「わかった、その願い適えよう」
こう言ってだった、ゼウスは。
二人に対して魔法をかけた、そうしてから話した。
「夫の方は死ぬとオークになる」
「その木にですか」
「そして妻の方は菩提樹になる」
「そうなのですか」
「そして二人共見たところな」
ゼウスは老夫婦にさらに話した。
「亡くなる時は同じだ」
「そうなのですか」
「共に死ねますか」
「その様だ、共に静かに穏やかに死ねるぞ」
ゼウスは二人の生命の火の燃える様子を見て話した。
「だからな」
「それで、ですか」
「私達が世を去れば」
「その時は木になりさらに共にいられる。それがお主達へのお礼じゃ」
笑顔で話した、そしてだった。
二柱の神々は一泊してから老夫婦に笑顔で別れを告げた、そうして旅を続けオリンポスに戻ったが数年後。
ゼウスはヘルメスからあの老夫婦の話を聞いた、彼等はどうなったかというと。
「二人共老衰でか」
「共に朝起きるとです」
「亡くなっておったか」
「姿はなく」
そうしてというのだ。
「いつも朝早く起きて働くのにと思って不思議に思った近所の者が観に行きますと」
そうすると、というのだ。
「二人の姿はなく」
「亡くなったな」
「そうですね」
「わし等にはわかる」
「そして家の前にです」
二人の家のというのだ。
「二本の木が生えていたそうです」
「オークと菩提樹がだな」
「そうなっていたそうです」
「そうであるな」
「はい、そして」
それにというのだ。
「二本の木は寄り添う様に立っているそうです
「そうか、夫婦は亡くなってもだな」
「共にいます」
「わしの魔法は力を発揮しているな」
「左様ですね」
「それは何よりだ、ではこれからもな」
ゼウスはヘルメスに満足している顔で述べた。
「あの場所で幸せにだ」
「過ごしてもらいますね」
「そうしてもらう」
こう言うのだった、そしてヘルメスと共にその場に行き言われた通りに寄り添い合って立っている木達に話した。
「これからもずっと一緒にいる様にな」
「・・・・・・・・・」
木達は喋ることは出来ないので答えなかった、だが。
葉音がした、その葉音は何処となく嬉しそうだった。神々はその音を聞いて優しい笑顔になって頷いた。
オークと菩提樹 完
2022・6・17
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