第二章
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「それが何か」
「でしたらです」
「うちに泊まられませんか」
「ここは冷えますので」
「ですから」
「よいのか?わし等は只の旅の者達だぞ」
ゼウスは自分達の素性を隠して二人に問うた。
「余所者であるが」
「構いません、ここはあまりにも冷えます」
「夜遅くから日の出までは特に酷くです」
「野宿なぞされますと風邪をひくどころではありません」
「より大変なことになりますので」
「そうか、そこまで言ってくれるならな」
ゼウスも好意をうけることにした、そうしてだった。
二人で家に入った、すると二人は実際に夫婦であり。
二人以外に家族はなく家も質素だった、二人は神々である旅人達にだった。
夕食をもてなおそうとしたがゼウスは彼等に笑って話した。
「それはよい」
「よい?」
「よいといいますと」
「我等が出す」
笑顔で言ってだった。
ゼウスとヘルメスはそれぞれパンと林檎それにワインが入った杯を出したが。
どれも幾ら飲んでも食べても減ることがない、これには二人も驚いた。
「まさかと思いますが」
「貴方達は」
「わしはゼウスだ」
「私はヘルメスだよ」
神々は笑って名乗った。
「隠していたがな」
「そうなのだ」
「私はフィレモンと申します」
「バウキスと申します」
老夫婦は畏まって跪いて応えた。
「この街で果物を売って暮らしています」
「息子達はもう独立しています」
「それで二人で、です」
「静かに暮らしています」
「そうなのか、しかし家に迎えてもらって何よりだ」
ゼウスは笑顔で応えた。
「それだけで充分だ」
「これはお礼をしなければいけません」
ヘルメスはそのゼウスに言った。
「やはり」
「その通りだな」
「人がそれを忘れても恩知らずとなるだけですが」
「神でそれは絶対にならん」
「はい、とはいっても忘れる時もありますが」
「こら、それをここで言うな」
ゼウスは笑って言うヘルメスにむっとした顔になってみせておどけを込めて叱った。
「全く、わし等が俗物みたいではないか」
「よく人間と変わらない性格と言われますが」
「それでも神であるからな」
「守るべきものを守らねばなりませんな」
「左様、それでじゃな」
「はい、お礼はです」
ヘルメスはゼウスにあらためて話した。
「すべきです」
「絶対にな」
「はい、では」
「この者達にもな」
こう言ってだった。
ゼウスはあらためてだ、老夫婦に顔を向けて問うた。
「願いを聞こう、なくとも何でも聞くぞ」
「あの、ないとです」
「何も言えないですが」
「例えじゃ、それで何か願いはあるか」
二人に再び問うた。
「お主達には」
「そう言われますと」
「もうこれといって望みはありません
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