第三章
[8]前話
「常にそれが痛みとなり肩に食い込んでくるのだ」
「常ですか」
「それがどれだけ辛いか、だが石になればな」
「石は痛みを感じないですね」
「重さもな、だからな」
それでというのだ。
「私は自分の身体を石に変えたいのだ」
「石になればです」
ペルセウスはアトラスの想いを受けた、決意が強いこともわかった。
だがそれでもだ、前以て言うことが人として大事と思い語った。
「もう動けずここからです」
「離れられないな」
「そうなりますが」
「それでもだ」
アトラスはその強い決意で以て答えた。
「いい、どのみちこの役目から離れられないからな」
「天球を支えることから」
「娘達はゼウス神に口添えを言うが」
「それはですか」
「私も神だ、言われた務めは果たすとな」
その様にというのだ。
「定めなくてはならない」
「神として」
「誇りだ、わかるな」
「はい、それは」
「それ故にだ、石になりだ」
「重さ、痛みから解放され」
「その務めを果たしたいのだ」
こう言うのだった。
「いいか」
「そこまで言われるなら」
ペルセウスはアトラスの決意が覆らない決してそうならないことを確認した、そのうえでであった。
腰の袋からメデューサの首を出した、その恐ろしい顔を見ると。
アトラスは歓喜の顔で石となった、そうしてだった。
そのうえで天球を支えることになった、石となった巨大な神を見届けてだった。
ペルセウスはメデューサの首を袋に戻してだった。
ペガサスに乗るとその場を去り黄金の林檎の木のところに赴きことの次第を話した、するとだった。
七人の娘達はほっとした様な顔になって言った。
「父も喜んでいます」
「苦しみから解放されたうえで務めを果たせるのですから」
「石に変えて頂き有り難うございます」
「心から感謝します」
「そう言って頂けるのなら」
ペルセウスもよしとした、そうして彼の行くべき場所に向かった。
今巨大な神は北アフリカ沿岸部にある、その名をアトラス山脈と言う。天球を支えていた神は今そこにいる。そのうえで今も苦しみから解放されたうえで彼の務めを果たしているのである。巨大な石即ち山脈になっても。
アトラスの願い 完
2022・6・12
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