第一章
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瘤で
ある国で独裁政治を敷き全世界に悪名を轟かせている金和博には影武者がいるのではと噂されている。だが。
彼の太っていて眼鏡をかけて半分白髪でふてぶてしさと悪い意味でのしたたかさが感じられる顔を見てだ。
陸上自衛隊のある師団で幕僚を務めている二等陸佐前田宏昌は首を傾げさせて言った。一七二程の背で痩せた面長の顔で目は細く糸の様だ。黒髪は短くしている。
「なあ、金和博だがな」
「はい、あの独裁者ですね」
彼の部下である三等陸佐奥村大二郎が応えた、一六二程の背で小さいが長い睫毛を持つ整った目と顎の先が尖った顔をしていて引き締まった身体をしている。黒髪は奇麗に整えている。
「あの男がどうしたんですか?」
「影武者がいるそうだな」
前田は奥村に師団の本部で話した。
「そうだな」
「独裁者あるあるですね」
奥村は前田の言葉にこう返した。
「影武者は」
「ああ、それでな」
「あの男も影武者がいますね」
「そうらしいな」
「そうした話がありますね」
「若しもだ」
前田は真剣な顔で言った。
「有事でな」
「あの国が何かしてきたら」
「アメリカも動くな」
「絶対にそうなりますね」
「その時にな」
前田はさらに話した。
「アメリカ軍は徹底的にやるからな」
「あの独裁者自身にもですね」
「何かしようとな」
「作戦を立てますね」
「独裁国家は独裁者が全てだ」
まさにその者がだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「ああ、だからな」
「あの独裁者をどうにかすれば」
「それだけでだ」
彼一人を消せばというのだ。
「あの国は頭がなくなる」
「人も組織も頭がなくなりますと」
それならとだ、奥村も言った。
「それで、ですね」
「そうだな、動かなくなるな」
「頭がなくなったら終わりですからね」
「特にああした独裁国家はな」
「独裁者は自分に権限を集中させますからね」
「独裁者は働き者だ」
前田はこうも言った。
「自分に権限を集中させるとな」
「当然決裁とか考えることも多くなります」
「俺達だってな」
自衛隊の幹部もというのだ。
「仕事が多いだろ」
「ですね、書類仕事にです」
奥村は前田のその言葉に少し苦笑いになって応えた、二人共その自衛隊の幹部なので誰よりもわかっていることだ。
「会議に訓練に」
「何かとだな」
「あります」
「俺達だってそうなんだ」
「まして一国の独裁者になりますと」
「もうな」
それこそというのだ。
「凄い仕事の量だ、だからな」
「独裁者は働き者でないとですね」
「務まらない、そしてな」
そのうえでというのだ。
「忙しくても権力があるならな」
「いいんですね」
「そうした
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