第23節「青い果実」
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俺の方からも、姉さんに言ったかもしれない。
あまりにも懐かしい言葉に、思わず目を見開いていると、反対側からツェルトが肩を叩いてきた。
「俺の知ってるお前は、響と一緒に歩いていけるいい漢だったぜ。同じ歩幅で、一緒にな。けど、今は焦りすぎて響を置いてっちまってるな。俺もちょっと前、置いてかれた側だからよく分かる」
「俺が、響を……」
「ああ。……自分の気持ちを偽るのは、”漢“じゃねぇんだろ?」
ニヤッと笑いながら投げかけてきたその言葉は、いつか俺がツェルトに投げた言葉だった。
『“漢”ならッ!自分の気持ちを偽るなッ!その迷いを、良心の呵責を、俺に押し付けてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇッ!!』
「お前が俺に教えてくれたんだ。愛する事と依存する事は違うってな。今、お前はどうだ?立花響を”愛して“いるか?」
「翔、君のアームドギアを思い出すんだ。その形が君の在り方で、僕達の名前になった事を」
……そうか。俺は、大事な事を忘れてたんだな。
俺とした事が、不甲斐ない。
響に辛い思いをさせたくないと思うあまり、知らぬ間に楽な方へと流されていたようだ。
『辛い思いをさせたくない』ということと『戦わせたくない』というのは、同じようで少し違う。
人間関係は、外交と同じだ。こちらに戦う気がなくても、相手が否応なしに戦う事を強いてくる事がある。
そして万が一、相手が先に手を振りあげた場合、こちらもそれを防ぐために手を出さなくてはならない。
相手が強大な力を振りかざしてそうしてくる時は、こちらもそれに抗するだけの力が必要だ。
交渉とは、両者の力が拮抗しているからこそ成立する。
それは国と国だけの話では無い。人と人、大人同士だけでなく、子供同士でだってそうだ。
それでも、それを理由に暴力を正当化しない。
立花響という少女が苦悩するのは、かつて理由のない暴力に傷つけられたが故の優しさだ。
だから俺は、そんな彼女と共に悩み、彼女が掲げる『拳を開いて繋ぎ合う』という夢を実現させるために戦う。
彼女の理想を、稚拙だと笑わせないために並び立つ。
だから……俺のやるべき事は、俺が本当にやりたい事は、響を戦わせないことなんかじゃないッ!!
「2人とも、ありがとう!俺の本当にやりたい事、お陰で思い出したッ!」
思い出させてくれた戦友の肩に、俺も腕を回す。
ここ数日、胸に燻っていたものが晴れたような気がした。
「俺、響に伝えてくるッ!」
「行ってきなよ。今出られるの、翔だけなんだからさ」
「頼むぜヒーロー!俺達の分まで暴れて来いッ!」
二人に背中を押され、了子さん達のラボまで駆け出した。
外ではミサイルと銃弾の弾ける音、そして風を切る刃の音が鳴り響いて
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