第23節「青い果実」
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
緊急事態だ。上には俺から話をつける』
「じゃ、行きましょ。積もる話はあるけれど、今はとにかく時間が惜しいわ」
「陳謝、迷惑をかける」
驚く純やツェルトを置き去りに、了子さんはグリムさんを連れてラボへと戻って行った。
後に残されたのは、俺たち3人だけだ。
「どうする?」
「俺はあいつらの回収があるからな。純、お前は翔に……」
「なあ、2人とも……話があるんだ」
「ん?」
「どうしたの、翔?」
2人の視線が俺に集まる。
「実は──」
俺は先程、グリムさんから投げかけられた問いについて2人に話した。
RN式をギアとして纏える俺たちには共通点がある。
それは、それぞれが装者と深い関係にある事だ。
俺に響がいるように、純には雪音先輩がいて、ツェルトにはマリアさんがいる。
伴装者になったきっかけも、戦う理由も、大切な人を守りたいと一心に願う想いにあった。
だから、2人は答えを持っている気がする。
俺は意を決して打ち明けた。
「……俺は響に戦ってほしくないと思う。響が傷つくのが嫌なんだ。でも、響は戦う事で誰かを助けられるなら、迷いながらも戦う。俺は……どうするべきなんだ?」
響を支えると決めたが、彼女に傷ついてほしくない。
望まぬ戦いであるのなら、彼女に拳を握ってほしくない。普通の女の子として生きていて欲しい。
しかし同時に、彼女の夢を応援したいという気持ちが存在する。
彼女が誰かを助けるために戦わざるを得ないのであれば、共に隣で支えるべきだと心が叫んでいる。
相反する感情に挟まれ、胸が重たくて仕方ない。
2人ならどうするだろうか?
いいや、この2人は迷わない。正しいとか間違っているかじゃなくて、愛する人と一緒に傷つきながらでも進める道を探そうとする。
自分の決断に胸を張っていられる選択が出来る強さだ。
俺は……俺自身が傷つくのは構わない。
だけど、響が傷つく事になるのは嫌だ。想像するだけで胸が張り裂けそうになるし、自分が許せなくなってしまう。
どうしたらいいんだ……。
「そんなの決まってるじゃないか」
「ああ、そうだな。らしくない迷い方しやがって」
顔を上げると、俺の隣に移動した2人が肩を組んできた。
訳が分からず惚けていると、先に口を開いたのは純だった。
「翔の迷いは、立花さんを大切に想っているからこそのものだ。だからこそ、立花さんを大切に思うあまり、自分の本当の気持ちが見えなくなってるんじゃないかな?」
「本当の気持ち……」
「そう。肩に力が入りすぎてて、逆にポッキリ折れそうだ。もう少し、立花さんの言葉に耳を傾けてもいいんじゃない?」
前に、姉さんが奏さんから似たような事を言われていたような気がする。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ