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こんなそっくりさんは嫌だ
第一章

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                 こんなそっくりさんは嫌だ
 高校で教師をしている加藤久光は丸く手大きな目と大きな唇それに面長の顔で黒髪をスポーツ刈りにしている、背は一七八ありやや太っている。
 その外見を見てだ、彼に多くの人が言っていた。
「あんたあの人に似てるな」
「そうそう、落語家の守屋菊蔵」
「あの人に似てるな」
「声も仕草も」
「そんなに似てるかな」
 加藤はよくそう言われるのでだ。
 その守屋菊蔵を見ると成程となった。
「確かにそっくりだな」
「そうだろ」
「本当にそっくりだろ」
「声だってな」
「そして仕草も」
「鏡を見ているみたいだよ」
 加藤はこうも言った。
「これは」
「本人さんかって思う位に」
「本当にそっくりだよ」
「若しかして双子とか?」
「生き別れの兄弟とか」
「いや、それはないから」
 加藤はそれは否定した、そんな話は親から聞いたことがないからだ。彼は一人っ子であり両親もはっきりと言っている。
 だがそれでもだ。
 あまりにもそっくりと言われるのでだった、彼はイメチェンを計った。
「あれっ、髪の毛伸ばすの」
「それでジムに通って肉体改造するんだ」
「そうするんだ」
「うん、あんまりにも言われるから」
 その落語家にそっくりだとだ。
「ちょっと思うところあってね」
「何か悪いな」
「いつもそっくりって言って」
「気にしてたのね」
「いいよ、それはね」
 特にとだ、加藤は笑って答えた。
「僕が決めたことだから」
「そうか、それじゃあ」
「これからはか」
「イメチェンか」
「それに入るよ」
 こう話してだった。
 彼はファッションも変えた、これまではスーツが主だったがラフなものにした。そこまでして変えたのだが。
 ある日だ、自宅でテレビを観ていると。
 まず一緒に観ていた両親が言った。
「おい、この犯人」
「そうよね」
 二人は逮捕された連続強盗殺人犯元木和博を観て話した。
「そっくりだよな」
「ああ、久光にな」
「今の外見も」
「それでファッションもな」
「えっ、嘘だよね」
 加藤自身もその犯人を観て驚いた。
「この人って」
「ああ、そっくりだよな」
「髪型だってね」
「どう見てもな」
「あんたよ」
「これは嫌だよ」
 加藤は眉を曇らせて言った。
「これじゃあ落語家さんに似てる方がだよ」
「いいな」
「そうよね」
「うん」
 親にこう答えた。
「随分言われたけれど」
「そうだよな」
「流石に犯罪者だとね」
「嫌だよ、だから」
 立ち上がって言った。
「ちょっと美容院行って来るよ」
「髪型変えるか」
「そうするのね」
「元に戻すよ、それに」
 両親にさらに話した。
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