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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
一笑千金 その5
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よりアウトバーンに沿って、車は、全速力で東独領内を駆け抜ける。
帰りの車中は、いたって静か。
もうブランデンブルク門の影もかすんでから、美久はそっと言った。
「まさか、本当に一緒になるおつもりなのですか……」
それまで、感傷に浸っていたマサキは、左脇の彼女に顔を向けると、
「人形の貴様が()いているのか、俺の作った推論型AIもこれ程の出来とはな。傑作だ」
くつくつと声を上げて笑い、
「この際だ、よく言っておこう。俺は、柄にもなく、あの娘に本心から惚れた」
 何処か恍惚と語るマサキに、美久は唖然とするも、
「あんな小娘に心を弄ばれて……。それでは、東ドイツの言いなりになる様な物ではありませんか。」
「何より、愛に全てを捧げる処女(おとめ)の純真さ……そのものに。
愛と、言っても肉欲の愛ばかりが愛ではない。
肉親への情愛、自分が所属する共同体への献身、民族愛、そして愛国心……」
と、いうと(うつむ)き、紫煙を燻らせる。 
 マサキは、激情が収まった後、再び口を開き、
「俺は、たしかにベルンハルトの妻に一目ぼれした。
だが、やはりそれは、あのどこか、(まど)わすような眼や唇に、心奪われたにしか過ぎない。
思えば、アイリスディーナと比して、あくどく感じる。あの清らかさは、得難きものだ」
と、正直に言った。

不敵の笑みを浮かべ、
「この色道は、もとより本気よ。男の生き方として、筋を通さねばなるまい」
「ええ……」
「だが俺が今生(こんじょう)黄泉(よみ)()ったのは、ひとえに、この世界を征服する為よ。
その為には、月面と火星に居る化け物共を、塵一つ残さず、消滅させる」

 既に、地上にあるハイヴは灰燼に帰した。
遠く、銀河の彼方にある、化け物の巣穴。
やがては、次元連結システムによって、存在そのものを、この宇宙、次元から消滅させる。
準備も、既に万端。残る懸念は、超大国・アメリカの思惑のみ……。
マサキの瞳は、(あや)しく光った。
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