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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
一笑千金 その5
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!」
「俺は産科医ではないから、正確な事は言えんが……。
情緒の不安定さや、貧血、コーヒーや紅茶への嫌悪感を示す味覚の変化……。
以上の事から、十分可能性が高い」
「でも、吐き気や頭痛を訴えてなかったし……」
「病気もそうだが、性ホルモンや妊娠による人体の変化は人によって千差万別(せんさばんべつ)だ。
一応、次元連結システムで調べてやるが、医者の診断を仰げ。
最悪、裏場に待機している軍医でも呼んで来い」と、青い顔をして、伝えた。
途端に、ヤウクは納得したような顔をして、何処か安堵した様子だった。

 そして右手を額に沿えて、ユルゲンをなじった。
「しかし、あの唐変木(とうへんぼく)は気が付いていないのか」
「まさか」と、ヤウクは、あきらめの表情を見せる。
「たしかに18の小娘を、考えなしに(めと)るくらいだからな」と深くため息をついた。
その様に、ヤウクは、酷く戸惑いの表情を面に見せ、
「じゃあ君は幾つくらいの女性が良いんだね」と問いただした。
むっとしたマサキは、
「妊娠に関しては、肉体的には16歳前後でも大丈夫だが、あの娘は精神が完成して居まい。
22、3歳の頃でも良かったのではないか」と、持論を展開した。
 やはりマサキは、現代の日本人である。
高級将校になる人物の妻には、夫を支えるだけの知識や教養、行儀作法なども必要と思い、そう答えたのだ。
早婚の東欧諸国、ソ連圏では、異質な見解であった。
学生結婚がザラで、妊娠を機に退職や休学をし、後に復学や復職が一般的価値観だった彼等からすると奇異。
 意図せぬ形で、マサキは異世界の人間であることをヤウクに伝えたのと同じであった。




 日没の頃、共和国宮殿に着いたマサキ達は、待ちかねていた綾峰(あやみね)と合流する。
抜け出したユルゲンたちを見送った後、マサキは、アイリスディーナに別れの挨拶をかける。
「今日は(たの)しませてもらった。こんな瑞々(みずみず)しい気持ちに、久しぶりになっている己自身に驚いている」
と、相好(そうごう)を崩し、アイリスディーナの両手を握り、
「お前がこんな魅惑的とは知らなんだ。女として自信を持て」と励まし、
「これで、何かあったら連絡して来い」と、次元連結システムを内蔵したペンダントを手渡した。

そして、何時もの如く不敵の笑みを浮かべ、ヤウクに向かい、
「ロシア人、ベルンハルトを頼む」と、肩を叩き、そしてマライの方を振り返り、
「ベルンハルトの(たぎ)る情熱を、妻の代わりに受け止めてやってくれ。
そうせねば美人局(つつもたせ)にひっかかるやもしれん」と、自分を棚に上げ、言いやった。

 マサキは満面に喜色をたぎらせながら、満足気に哄笑すると、車に乗り込み、その場を後にした。
車の姿が見えな
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