あと1つ
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<ランシール>
リュカ達は昨日の疲れが抜けぬまま、宿屋に併設された食堂へ集まり、遅めの朝食をとっていた。
本来であれば、パーティー内の良心…アルルとティミーはみんなと共に集まっているはずなのだが、今朝に限っては寝坊で現れてこない…
皆、分かっているのだ。
2人が疲れ切っている事を…
アルルは1人(自称)で洞窟へ入り、ブルーオーブを手に入れてきた。
ティミーは1人(自称)で町中を彷徨い、ナンパしていた。
しかもそれは建前であり、昨晩の2人の行為の激しさを…
みんな重々承知しているのだ!
カンダタなどは、食堂へ現れリュカを見るや『流石は旦那の息子!地球のへそって洞窟を探検しただけでは物足りず、今度はアルルのへその下の洞窟を探検した様だな!アルルも青い宝玉1個じゃ満足出来ず、ティミーの宝玉にまで手を出したぜ!』と、ヤラしくニヤつきながら昨晩の事を話題に出す。
するとリュカが、持っていたコップを握り潰し、カンダタを殺しそうな勢いで睨み付ける!
世界から音が失われたのかと思うような静けさの中、リュカの怒気だけが食堂内を支配する…
全く無関係な別の客も、リュカの怒気に晒されて、胃痛を起こす程の…
そんな状態を救ってくれたのは、出来る男ウルフ…
「ア、アルルは1日中…1人で洞窟を探検してたんだ!寝坊もするよ!ティ、ティミーさんだって、アルルが心配で、1日中町中を彷徨ってたんだもん…い、今はゆっくり眠らせておこうよ…そ、そんな事より、オーブも後1個だね!」
優秀なる義息はその場の空気を読み、ベターな建前を前面に押し出し、尊敬する義兄カップルの話題に触れないように話を逸らす。
皆、微妙に胃痛を起こしながら、見た目和気藹々と朝食をとるリュカ達に、随分遅れて合流してきた勇者カップル。
「すみません…寝坊してしまいました…」
「何…気にするなよ。昨日の試練は大変だったのだから、もっとゆっくりしてても良かったんだよ」
ティミーが謝りながらアルルと食堂へ入ってきた為、リュカは優しい表情と口調で労いの言葉をかける。
その瞬間、完全に消えたリュカの怒気に、食堂内の全員(無関係な客も含む)が安堵の表情を浮かべた。
「そんなワケにもいかないわ…後1つのオーブの事も話し合わなければならないし…」
「うん、そうだね…それに皆さん、食事をせずに待っていてくれたみたいだし」
アルルとティミーは席に着き、テーブルの上に置かれた、ほぼ手付かずの料理を見て、気遣いに恐縮している。
しかし真実は、あまりの緊張感に、誰も食欲が湧かなかったのが、料理が残っている本当の理由だ。
勿論、そんな事は誰も言えない…
「さて…残りはイエローオーブだけだけど、カンダタに何か情報はある?」
空腹ではあるものの、誰も食事に手を付けないの
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