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展覧会の絵
第十話 思春期その八
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「君も。祈ってくれるかな」
「私は」
「信じればいいんだよ」
 戸惑いを見せる春香にだ。十字はまた言った。
「そうすればね」
「信じれば」
「そう。そうすればいいんだよ」
「じゃあ僕は」
「そう。信じるんだよ」
 また言う十字だった。
「そうすればいいからね」
「けれどそれでも」
「祈れないかな」
 まだ戸惑う春香にだ。十字はこうも言った。
「今は」
「ええ。どうしても」
「では僕が祈るよ」
「佐藤君が?」
「そう、僕がね」
 そうするとだ。十字は二人に話す。
「そうさせてもらうよ」
「祈るって俺達のことをかよ」
「そうしてくれるの?」
「誰もが神の子だから」
 これは十字独自の解釈だ。彼の信仰は狭い範囲のものではないのだ。
 だからこそだ。今こう二人に言えたのである。
「だから。そうさせてもらうよ」
「ううん、何ていうかな」
「違うわよね」
 望と春香は十字のその話を受けてだ。まずは顔を見合わせてだ。そのうえで二人で話す。このことはどうしてもだ。二人にとってはわからないことだった。
 それでだ。彼等はこう十字に言った。
「悪い気もするけれど」
「それでもいいのかしら」
「祈りは感謝されるものじゃないから」
 だからいいとだ。十字はその二人に答える。
「いいんだよ」
「まあそっちがいいって言うんならな」
「そこまで言うのなら」
「それなら俺達はな」
「いいわ」
 少し考えてからだ。そのうえでだ。二人はそれぞれこう十字に答えた。
 そしてだ。十字もその言葉を受けて静かに返した。
「では。祈らせてもらうよ」
「ああ。言うならあれか?ボランティア?」
「それになるの?」
「そのボランティアも。神の愛からはじまったことだから」
 この解釈もだ。十字は二人に話した。
「神の愛は無限のものだから」
「だからいいってのか」
「そうなのね」
「そう。それではね」
 こう話してだ。十字に言ったのだった。
 十字もその二人の言葉を受けた。そしてそのうえでだ。春香にこう言ったのだった。
「神は。必ず救われるよ」
「えっ・・・・・・」
「何があろうともね。そしてね」
「そして・・・・・・」
「君の大切な人を。何処までも信じるんだ」
「大切な人を」
 十字の言葉を受けながらだ。春香は望をちらりと見た。だがそれは無意識のものだった。そうして無意識に見たうえでこうも言う彼女だった。
「信じることが」
「そうすれば救われるよ」
「そうなのかしら」
「そう。そしてね」
 今度はだ。十字は望を見てだ。彼に言った。
「君は自棄になってもそれ
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