第十話 思春期その六
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「たまたま通り掛かって聞いたから」
「それでなの」
「ああ、成程な」
「うん。それでね」
十字は二人にさらに話していく。
「さっき君が言ったことだけれど」
「ああ、私ね」
「そう、君だよ」
春香を見てそのうえでの言葉だった。
「君がさっき言ったけれど」
「食べ物を粗末にしたら神様が怒るっていうのね」
「そう。それはその通りなんだ」
淡々とした口調でだ。十字はその春香に話す。
「君の言う通りだよ」
「そうよね。食べ物を粗末にしたら駄目よね」
「神は人にマナを降らせ給う」
聖書、モーゼのエジプトの時のことを出しての言葉だった。
「けれどその恵みは忘れてはならないんだ」
「うん、その通りよね」
「忘れると」
それでだ。どうなるかというのだ。
「神はお怒りになられるよ。それだけで許されない罪悪だから」
「ほら、佐藤君もそう言ってるじゃない」
十字の言葉を受けてだ。春香はここぞとばかりに望に対して言ってきた。
「トマトもね。食べなさい」
「おい、そうなるのかよ」
「そうよ。トマトは身体にいいし」
またこのことを言う春香だった。
「わかったわね。じゃあ食べなさい」
「ちぇっ、トマトの神様の祟りかよ」
「トマトに神様っているの?」
「いるだろ、そりゃ」
望は日本人の宗教観から話した。
「あらゆるものに神様がいるからな」
「そうなるのね」
「日本には八百万の神々がいる」
十字はこの考えを認めて言ってきた。
「そして僕達の神は常に人を見ておられるんだ」
「僕達の神?ああ、そういえばな」
「佐藤君って教会の人だたわね」
「ってことはキリスト教か」
「そうなるわね」
「そう。僕はカトリックだよ」
十字もだ。二人に対して答える。
「神にお仕えしているんだ」
「それでその神様が私達を見てるの」
「しかもいつも」
「そう。見ているんだよ」
こう話すのだった。
「見守っておられるんだよ」
「それで俺がトマトを食うのを見てるのかよ」
「見てるよ。ただね」
「ただ?」
「見ていることはそれだけではないよ」
それは違うと言う十字だった。
「他のあらゆることをね」
「俺の全部かよ」
「君だけじゃなくて」
言いながらだ。十字は春香を見た。
そしてそのうえでだ。こう彼女に言ったのである。
「君もね」
「私も?」
「そう。あらゆることを見ているんだよ」
「えっ・・・・・・」
十字の今の言葉にだ。春香は表情を凍らせた。そうしてだ。
あのことを神が、誰かが知っていると考えてだ。その凍った顔をさらにだ。白くさせた。
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