第十話 思春期その五
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「だったらね。トマトもね」
「食えってんだな」
「そうよ。食べなさい」
何処かお姉さんめいた口調でだ。こう言った春香だった。
「わかったわね」
「ちぇっ、仕方ないな」
「好き嫌いはない方がいいのよ」
「じゃあ御前はないのかよ」
「ないわ」
春香はきっぱりとだ。望に対して答えた。
「好き嫌いなんてね」
「だから言えるのかよ」
「そうよ。それは望も知ってるじゃない」
「まあな。子供の頃からの付き合いだからな」
望は口をやや尖らせて答えた。
「御前本当に何でも食べるからな」
「食べものを粗末にするのはよくないわよ」
やはりお姉さんめいた口調だった。
「後で神様に怒られるわよ」
「神様にか」
「そう。仏様かも知れないけれど」
春香がこう言うとだった。二人のところにだ。
十字がすっと出て来てだ。そのうえでこう言ってきたのだった。
「神様。その通りだよ」
「あれっ、確かあんた」
「あの美術部の」
望と春香は十字の姿を見てそれでこうしたことを言った。彼も学校に入ってそれなりの時が経ってきていたのでそれでだ。もう転校生扱いではなくなってきていた。
そのうえでだ。こう言われたのだ。
「佐藤十字だよな」
「そうよね」
「そうだよ」
その通りだとだ。十字は表情のない顔で二人に答えた。
「僕は佐藤十字。知っていてくれてるかな」
「まあな。あんた有名だしな」
「凄く頭がいいのよね」
「頭がいいのかどうかは知らないけれど」
それはどうでもいいこととして話す十字だった。
「それでも。僕は有名なんだ」
「奇麗な顔してるし」
春香は十字のその整った、ルネサンス期の少女の彫刻を思わせる顔を見ながら答えた。
「それに。やっぱり頭がいいし」
「あんた清原塾だったよな」
望は彼が通っている塾のことを話した。
「そこだったよな」
「うん。塾にも通ってるよ」
「だよな。そこでも抜群の成績だしな」
「それで有名なのよ」
春香もまた十字に言う。
「頭脳明晰、眉目秀麗でね」
「しかも。ええと、容姿・・・・・・何だったかな」
「容姿端麗よ」
「そうそう、それだよ」
望は春香に言われてだ。彼女に指を向けてそれを振りながら述べた。
「容姿端麗だってな」
「そうよね。しかも絵が上手いって」
「あんた凄い有名なんだぜ」
「成程ね。僕は有名なんだ」
そう言われてもだ。表情を変えない十字だった。
そしてそのままだ。こう言うのだった。
「そうなんだね」
「そうよ。それでだけれど」
「あんた、どうしてここに来たんだよ」
話題が変わった。十字の評判から
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