第二部 1978年
影の政府
米国に游ぶ その2
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に関して、お忘れの読者もいると思うので、説明を許していただきたい。
彼は、元は陸軍航空隊のヘリコプター操縦士で、ユルゲンのモスクワ留学組の同級である。
ユルゲンとゲルツィンの一騎打ちの際に、米海軍の「海賊旗」隊を引き連れてきた人物。
彼女の背後に立つ、見上げるような偉丈夫は、ヴァルター・クリューガー曹長であった。
ユルゲンのから信任の厚い彼は、ユルゲンに依頼され、アイリスディーナを見守っていたのであった。
兄は、密かに信頼できる人物を、彼女の傍に置くよう、配慮した。
無論、妹アイリスディーナに、よからぬ虫が近寄らぬように、準備していたのである。
アイリス本人は、兄の、蝶よ花よと、扱うのを煩わしく感じていたが、この時ばかりは感謝した。
ヘンペルは、薄い紅茶で唇を濡らすと、
「おどかして、ごめんね、アイリスちゃん。俺はユルゲンの同級、ヘンペルだよ。
アンタみたいなお姫様は、こうしないと、ちょっかい出しに来る馬鹿が居るからさあ」
「ありがとうございます。ヘンペルさん。それにクリューガー曹長も」
クリューガーは、
「礼には及びません。同志少尉。兄君からは色々私自身が世話になっているので。
こういう機会でなければ、御恩返しは出来ません」
と、慇懃に頭を下げた。
朝、営門で別れたベアトリクスは、どうしたのであろうか。
妊娠が判明した彼女は、流石に通常勤務は過酷であるとして、戦術機部隊から外された。
そして、戦術機部隊からの転属と言う事で、国防省本部にある大臣官房に面接に来ていた。
では、大臣官房というのは、どんな仕事する部署であろうか。
その業務は、一般省庁を例にとれば、法務や秘書、人事等の管理業務や、宣伝、会計、恩給など多岐にわたる。
無論、各省すべてに設置され、省全体の運営に関して調整を行う部局。
10万人近い人員を誇る軍隊では、流石に法務や会計は独立した部門を儲けてはいるが、雑務に関しては他省庁と同じである。
ユルゲンと共に渡米したマライの抜けた穴を埋めると言う事で、妊娠中の彼女を呼び込んだ。
しかし、それは表向きの理由である。
実際の所は、彼女が、通産次官アベール・ブレーメの娘だからである。
成績最優秀だが、シュタージに近い人物の令嬢で、夫は空軍始まって以来の問題児、ユルゲン。
どの部署も、そんな人物を引き取るのを嫌がり、たらい回しの上、大臣官房にお鉢が回ってきた。
また、ユルゲンの妻と言う事で、上層部が直に目を配って彼女を監視するために呼びよせたのだ。
つまり、この仕事は、ベアトリクスの首にかかった鈴のような物であった。
無論、そんな事が判らぬ彼女ではない。
この上ない幸運ではないのか。ぜひ機会を利用し、散々に、暴れ回ろう。
上手く大臣
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