第六百七十三話 腐れ外道の顔その十三
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「自分しかないしな」
「間違いなくそんな奴よね」
ラビニアも言った。
「どう考えても」
「そうとしか思えないな」
「ええ」
実際にというのだ。
「どう考えてもね」
「人間でない奴がだ」
「化けものになってる奴はね」
「愛情なんて持つか」
「ご家族に対しても」
「友情なぞ全くなくな」
そうしてというのだ。
「人の痛みもだ」
「わからない奴が」
「自分の恨みの為にだ」
ベリヤにはこうした話もある、兎角人間としていい話が全くないのがこの輩だ。当時のソ連では何かと人命が軽視されたがだ。
「何万人も殺した」
「それも酷いわね」
「カチンの森の首謀者でもあるしな」
ポーランド軍人への大量虐殺である。
「兎角だ」
「胸糞の悪い話が多いわね」
「それしかない」
ベリヤにはだ。
「そんな奴がだ」
「ご家族を愛していたか」
「そんなことはない」
「絶対にそうよね」
「愛情とはだ」
まさにというのだ。
「全く無縁だったのがな」
「ベリヤよね」
「そうとしか思えない」
「そうよね」
ラビニアもそれはと頷いた。
「本当にね。けれどね」
考えつつだ、ラビニアはフックに話した。麺はもう食べ終えていてそのうえでスープの中の愚をスプーンですくって食べている。
「何でご家族はね」
「愛していたかだな」
「息子さんとかね」
父の名誉回復を一生訴えていたがというのだ。
「どうしてかしらね」
「だから愛情を受けていたとな」
「息子さんは誤解していたの」
「そうに決まっている」
フックは言い切った。
「ああした奴はだ」
「愛情を持っていないわね」
「誰にもな」
「人の皮を被った化けものだったのね」
「それまでの秘密警察の長官はまだ人間だったがな」
血生臭い弾圧や処刑の責任者だったがというのだ。
「それでもな」
「ベリヤは違ったわね」
「そうした奴だった」
「これまでの長官でも最悪だったわね」
「そうだった」
まさにというのだ。
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