第一章
[2]次話
大きな家でも別に
長女の祈里が今度連れて来る交際相手の名前を聞いてだ、父の来須宗康も母の久美も次女の凛も最初それぞれの耳を疑った。
そしてその後でだ、祈里に言った。
「おい、西壁さんってな」
「かつてこの県全体を治めていたお殿様のお家じゃない」
「お姉ちゃんの彼氏さんって」
「そうなの、大学の同級生でね」
祈里は三人に答えた、黒髪をショートにさせた穏やかな顔立ちで背もスタイルも普通だ。
「そこで知り合ってね」
「それでか」
「交際はじめて」
「今度うちに連れて来てくれるの」
「そうなの」
黒髪をスポーツ刈りにした長方形の顔に細い目を持つ父と黒髪を後ろで団子にさせた面長で小さな目の母と自分そっくりだが大学生らしく二十歳になったばかりの雰囲気に満ちた妹に対して話したのだった。
「宜しくね」
「うちは別にな」
「何でもないサラリーマンとスーパーのパートで」
「普通なのに」
「お相手は元お殿様でな」
「今だって大きな会社経営されてて」
「マンション幾つも持っておられるのに」
三人は信じられないという顔で話した。
「そのお家となんて」
「釣り合わないわよ」
「どんなお付き合いすればいいんだ」
「そう言っても普通の人よ」
長女は戸惑うばかりの三人に話した。
「だから安心してね」
「しかしお付き合いがな」
「お家とお家のね」
「お殿様で今も凄いお金持ちなのに」
「確か県会議員の人もおられたな」
「政治家も出しておられるし」
「私達がそんな人達とお付き合いなんて」
三人はそれぞれ顔を見合わせて話すばかりだった。
だがそれでもだ、長女はその相手を連れて来た。すると普通の明るい感じの黒髪を短くさせた面長でにこにことした顔立ちのスーツ姿の青年が来た。
青年は礼儀正しいが明るく気さくな調子で名乗った。
「西壁裕樹といいます」
「は、はい」
「宜しくお願いします」
「こちらこそ」
三人は硬直する顔で応えた、そしてずっとその状況で西壁と話したが。
長女はその三人にその場で言った。リビングも奇麗で三人は一張羅だが彼女は普通のスーツである。
「だから硬くなる必要ないわよ」
「そう言われてもな」
「お相手の人のこと考えたら」
「やっぱりね」
「いえ、何でもないですよ」
西壁も笑って話した。
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