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身内は書くな
第二章

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「だからな」
「それでなのね」
「俺は文豪じゃないけれどな」
 とてもというのだ。
「私小説だってな」
「書こうと思ってるのね」
「そうなんだよ」
 こう姉に話してだった。
 リビングでじっと読み続けていたがふとだった。
 リビングのテレビでずっとゲームをしている姪つまり千和の娘である瑠美あどけない顔立ちで黒髪を短くしている彼女を見てだった。
 思いついた顔になってだ、こんなことを言った。
「そういえば親戚を書いてもいいな」
「駄目よ」
 後ろから姉つまり瑠美の母親の声がしてきた。
「あんたのプライベートなんかどうでもいいけれど」
「身内のことはか」
「特にうちの娘のことはよ」
「書いたら駄目か」
「それで揉めた人いたでしょ」
「泉鏡花さんだったかな」
 誠は視線を右にやって答えた。
「そうだったか」
「その人のお話あるでしょ」
「それで俺もか」
「そこから個人情報出たらどうするのよ」
「出るか?」
「プライベートを書けばよ」
 それでというのだ。
「ひょんなところからばれるのよ」
「世の中怖いな」
「だからね」
「身内は書いたら駄目か」
「そうよ、だから駄目よ」
「そうか、じゃあ俺のことでないと駄目か」
「その場合もよ」 
 自分のことを書く時もというのだ。
「何かあったらね」
「駄目だからか」
「そこは気を付けなさいね」
「昔じゃそれは違うか」
「そうよ、私小説もよ」
 これを書く時もというのだ。
「いいわね」
「気をつけてか」
「そうしてね」
「そうするな、瑠美ちゃんのことも姉ちゃんのことも書かないよ」
「他の人もよ」
 身内はというのだ。
「それであんた自身もよ」
「身元がばれない様にな」
「気を付けて書きなさいね」
「そうするな」
 誠は姉に答えた、そうして作品を読んでだった。
 後に私小説を書いたが自分自身だとわからない様に書いた、そして身内のことは書かなかった。そのうえで今はそうした時代だと強く認識したのだった。


身内は書くな   完


                  2022・10・22
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