第一章
[2]次話
身内は書くな
サラリーマンの傍ら小説投稿サイトで小説を発表している溝口誠はいつも小説の研究に余念がなかった。それで色々な小説を書いているが。
今は志賀直哉を読んでいた、太い眉にやや面長の顔で濃い顔立ちで癖のある黒髪を真ん中で分けている。背は一七〇程で中肉である。
その彼にだ、たまたま実家に帰省していた姉の千和が言って来た。背は一五五位で丸顔で穏やかな感じの人相である。眉は細く胸が結構目立っている。
「また勉強してるの」
「ああ、今異世界ものばかりだけれどな」
誠が姉に灰色の月志賀直哉の代表作の一つを読みつつ話した。
「こうしてだよ」
「色々なジャンル読んでるのね」
「俺も異世界もの書いてるけどさ」
それでもというのだ。
「そればかりってのもな」
「よくないからなのね」
「ああ、今書く作品はな」
それはというのだ。
「どんなのにしようかって思ってだよ」
「純文学読んでるのね」
「私小説な」
「志賀直哉ってそれで有名よね」
「小説って何でもありなんだよ」
その表現も題材も無限だというのだ。
「だからな」
「それでなのね」
「ああ、俺もこうしてな」
「私小説読んでなの」
「どんな作品を書けばいいかをな」
「勉強してるのね」
「文章や表現に」
そうしたものに加えてというのだ。
「題材もな」
「勉強してるのね」
「ああ、俺自身を書くか」
誠は考える顔で述べた。
「それもありか」
「あんたの日常書くのね」
「城の崎なんてな」
これも志賀直哉の代表作である。
「養生に行った先のことだろ」
「確か列車に撥ねられてよね」
「養生で行ったんだよ」
このことは作品でも書かれている。
「それでも作品になるからな」
「しかも名作って言われるわね」
「ああ、志賀直哉は文豪だよ」
こう言っていい人物だというのだ。
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