第二部 1978年
狙われた天才科学者
一笑千金 その2
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、清朝より掠め取った印度支那諸国を従え、果ては南太平洋の小島まで影響を及ぼした海軍。
今や、核の傘にかかる費用の為に、四海にその威光を及ぼす事など論外と言えるほど縮小し、その姿は往時を知る者を嘆かせた。
アベールは、通産次官として東ドイツの状況を誰よりも把握していた。
国民福祉の為の社会保障費を維持するためとはいえ、西ドイツより秘密裏に施し金を受け取っている以上に、ソ連よりパイプラインを通じて提供されていた格安の天然ガス、石油。
BETA戦争によりその供給量は減るも、自国使用分を削って転売していた差額を持って、国費に当てるのも限度がある。
ましてや核に同等するとも言われている天のゼオライマーの特殊機構……。
一人皮算用をしながら、悶々と思い悩んでいた。
「どちらにしろ木原博士に関しては男女の関係とか淫猥な話は聞いた事がない。思想も反ソで一本筋が通っているし、信用できる男やもしれん」
議長の言葉に、気を良くしたハイム少将は、
「不安にお思いならば、誰か、木原と会った者を呼び寄せて、その人物に聞きましょう」と答える。
ふと、不安げな表情のアーベルが漏らす。
「娘は、危険な男と言っていたが」
「次官、真ですか。お嬢様は何方で、博士と……」
ハイム少将に応じる形で、アベールは娘・ベアトリクスから伝え聞いた話を、打ち明ける。
「ユルゲン君と遊びに行った折に会ったそうだ。何でも例の戦術機に乗せて遠乗りに出たと……」
シュトラハヴィッツ少将は、苦笑を浮かべながら、
「初耳だな。あのベルンハルトと遊び仲間だったとは」
と、皮肉交じりに答えるも、
「おい、アルフレート、口を慎め」と、ハイム少将が彼を窘めた。
男は、密議に参加する面々からの発言を聞いた後、手に持った煙草をゆっくりと灰皿に押し付ける。
そして、覚悟したかのように述べた。
「まあ、俺の方でミンスクハイヴ攻略作戦の功績による勲章授与と言う事で、木原博士を呼び出して、アイリスに逢わせる。ちと不安な事もあるがな」
アベールは、彼の発言に内心おどろいたが、さあらぬ顔して、
「なんだね」と云いやった。
議長は、ふと冷笑を漏らしつつ、
「東洋人だろ、アイリスより小柄だったら……」と嘆く。
ハイムは、眉をひそめ、
「身丈や風采も重要でしょうが、彼は科学者です。やはり重要なのは人格や政治信条でしょう。
今の彼の立場は日本政府の傭兵の様な物です。上手く行けば引き込めるかもしれません」
と、小声を寄せて、マサキと日本政府との関係をはなした。
シュトラハヴィッツも、いやな顔をして、ふさいでいたが、ハイムの言を聞くと、いきなり鬱憤を吐きだすようにいった。
「悪魔のようなことを考える科学者だ
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