第七十話 尊敬と軽蔑その八
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「そうでしょ」
「ええ、酷い戦争やってたわね」
「三十年戦争とかね」
「無茶苦茶だったのよね」
「日本じゃ考えられないまでのね」
「とんでもない戦争だったのよね」
「本当に宗派が違うだけでね」
もっと言えば神聖ローマ帝国内の皇帝と諸侯そして帝国と周辺各国の利害が錯綜し非常に複雑な状況であった、そこから戦争に至ったのだ。
「もう容赦のないね」
「殺し合いになったのね」
「日本だと浄土宗と真言宗で戦争にならないでしょ」
「想像も出来ないわ」
咲は目を丸くさせて堪えた。
「とてもね」
「お母さんもよ、ただあんたの学校はね」
「大学の宗教学部だと」
「そうした資格も手に入れることが出来るのよ」
「だから考えてもいいのね」
「宗教関係者も進路の一つよ」
将来のというのだ。
「お坊さんや神主さんもね」
「そうなることも道なのね」
「人生のね」
「そうなのね」
「本物の宗教もあるから」
母はこのことは間違いないと話した。
「カルトはインチキの場合が多いけれど」
「本物の宗教もあって」
「そちらを信じることはね」
これはというのだ。
「いいのよ」
「それじゃあ」
「そう、あんたも悩みがあったりしたら」
「座禅組んだり経典読んだり」
「そしてお坊さんにお話をすることもね」
母はここでは禅宗彼女の母方の実家が信仰している臨済宗を念頭に話した。
「いいのよ」
「そうなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「お母さんやお父さんにもお話出来なかったら」
「お姉ちゃんや店長さんにも」
「そうした人達のところに行って」
「お話してもいいのね」
「親子や従姉妹でも何でも話せるか」
母は言った。
「そうとは限らないでしょ」
「そうしたお話もあるのね」
「若しそうしたことになったら」
その時はというのだ。
「ああした人達はそれがお仕事だし」
「人の悩みや苦しみを救うことが」
「だからね」
「そうした人達のところに行ってお話することもなのね」
「考えておいてね」
「わかったわ」
咲は母の言葉に素直な顔と声で頷いた。
「困った時はね」
「宗教家の人ともね」
「そちらで信頼出来る人と」
「お話してね」
「そうするわね」
「本当に人間って色々な時があるのよ」
母はこのことは真面目な顔で話した。
「生きていればね」
「困ったこともあって」
「悩みもあってね、咲もこれまであったでしょ」
「ええ、今だって不安があるし」
「不安?」
「このままでいいのかなとか思う時があるわ」
「それはあるわね、特にあんたの頃はね」
娘の年齢を考えて話した。
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