第三十八話 嫌な奴もいないその八
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「兄弟でかなり後でな」
「十五男か十六男位でな」
「それでもうな」
「藩主どころか養子の話もなくて」
「このまま埋もれると思って」
「学問や芸術に打ち込んだな」
「そうだったんだよな」
達川の話を聞きつつ話した。
「あの人は」
「それがひょんなことから藩主のお兄さんの養子になってな」
「跡を継いでな」
「藩主になってだ」
彦根藩のだ、三十五万石という譜代大名では破格の石高のだ。
「しかも大老になった」
「思わぬ大出世だな」
「そしてその出世からな」
さらにというのだ。
「幕府への忠誠心も強くてだ」
「ああなったんだな」
「元々の芸術家なところもな」
この一面もというのだ。
「完璧主義者でな」
「それが悪く出たんだな」
「だから下の者に異常に厳格でな」
「刑罰も重かったんだな」
「幕府の慣例を破るまでしてな」
刑罰を軽くするそれをだ、罪一等を減じるという言葉は実際に幕府は常に判決よりも刑罰を常に一等か二等下げていたからだ。最悪現状維持でありそうそう死刑になる様にはなっていなかったのである。
「蟄居も死罪も濫発してだ」
「嫌われてか」
「ああなった」
「それで今もざま見ろなんだな」
「そう言われているな、かく言う俺もだ」
アイスクリームを食べながら話した。
「あの人は嫌いだ」
「そこまでわかっていてもなんだな」
「どうして好きになれるんだ」
井伊直弼をというのだ。
「お前もそうだろ」
「ああ、大嫌いだよ」
達川もそうだと答えた。
「俺木戸孝允さん好きだけれどな」
「お前はそうか」
「それで木戸さんが尊敬する松陰さん処刑してるからな」
その為にというのだ。
「嫌いだよ」
「それも大嫌いだな」
「そうだよ」
こう越智に答えた。
「桜田門外の変はよくやったよ」
「そうだよな、けれどあれテロだよな」
成海はたこ焼きを食べながら言った、食べものもそろそろ少なくなってきている。
「いきなり攻撃してきたから」
「そうなんだよな」
達川もそれはと頷いた。
「言われてみれば」
「そうだよな」
「幕末って暗殺ばかりだけれどな」
「岡田以蔵さんとかな」
「桐野さんだって元々そうだったしな」
西郷隆盛の下で多くの暗殺の実行を担ったという。
「幕末はな」
「テロだらけだけれどな」
「そういえばそうなのよね」
一華もそれはと述べた。
「幕末って」
「もう京都なんかね」
達川はその一華に応えた。
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