敢闘編
第五十五話 アムリッツァ星域会戦(前)
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う点では挙国一致体制を取る事ができる。もし本当にそうなった場合、目的が単純な分、その目的に邁進する事ができる」
「しかし我々は…」
「ああ。宇宙艦隊は十六個の正規艦隊からなるが、その十六個がまともに動いているのを見た事がない。そもそも定数を満たしているのかすら不明だ」
「…イゼルローン要塞の存在があったからですね?」
「そうだ。あの要塞が難攻不落であった為に定数を維持しなくてもよい、あるいはする必要を感じなくなったのだ。考えてもみろキルヒアイス、本当に叛乱軍の奴等を討伐する気があるのなら、とっくにやっていたとは思わないか?」
「はい。帝国の過去の軍事指導者達が全て能力が無かった訳ではないでしょうし」
「だが、そうはならなかった。イゼルローン要塞が完成し、状況が固定してしまった。軍務省の涙すべき四十分…聞いた事があるだろう?」
「第二次ティアマト会戦…会戦に参加した帝国軍は壊滅的な打撃を受け、叛乱軍が完勝した戦いですね」
「そうだ。負けた挙げ句に将官、高級軍人の戦死者があまりも多く、軍務省が大混乱に陥った…そしてイゼルローン要塞の建設に繋がる…著しい人的損耗と、その補充に要する時間を稼ぐ為に帝国は自らビンの栓を作って閉じ籠った」
「そして人的損耗の穴を埋めていったのは下級貴族や平民です」
「そう。だが帝国上層部としてはこれは由々しき事態だ。藩屏を自称する大貴族は進んで前線には出たがらないから、武勲をあげるのは下級貴族や帝国騎士、平民階級出身の軍人達ということになる。俺の見たところ、分艦隊指揮官や艦隊司令官を張れそうな奴等が中級指揮官にごろごろしているんだ。下級貴族は貴族階級だからまだ良しとしても、政府としては平民の台頭は望ましくない。だから彼等には活躍の場が中々与えられないのさ…適材適所ではなく能力に関係の無い縁故人事がまかり通っては叛乱軍を撃滅するなど痴愚の夢と言うべきだ。そして戦費はかさむ一方、当然叛乱軍領域に派遣出来る兵力にも差し障りが出る…自分でも極端とは思うが、見方としてはまあ間違ってはいないだろう」
「ミュッケンベルガー元帥はどうお考えなのでしょう」
「奴に能力がない、とは言わんが、今言った通り、他の事に足を引っ張られているのだ。悲しい事だ。俺にとっては好都合だがな」
お代わりを淹れて来ます、とキルヒアイスが部屋を出て行く。痴愚の夢…それに付き合わされるとは何の喜劇だろう…。
12月11日20:00
アムリッツァ星系、第四周回軌道近傍、自由惑星同盟軍、第二艦隊、戦艦エルセントロ、
ダスティ・アッテンボロー
旗艦以下七隻…第十一艦隊もどうやったらそこまでやられるんだよ全く…ああはなりたくないもんだ。敵わないと思ったら逃げるが勝ちってのに…。
「砲術長、航海長からですが、第五周回軌道に微かに熱源反応
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