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DOREAM BASEBALL 〜夢見る乙女の物語〜 
一本のヒット
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間違いねぇな」

逆転を許してからも踏み留まっている相手の投手の姿に感心していると蜂谷が冗談交じりにそんなことを言うのでカミューニは思わず笑ってしまった。

「リュシー、向こうはムービングに気付いたぞ」
「そうみたいだね」

守備に向かうリュシーを呼び止めるカミューニ。彼らの視線の先には円陣を組んでいる相手ベンチの姿があった。

「あの7番……下位にいるくせにいいもん持ってんなぁ」
「リーチが長い分……余計に芯を外しちゃったからね」

ソフィアのストレートが打てない要因。その一つが明里に気付かれたことに二人は察していた。しかし、それでも青年の表情に焦りの色はない。

「まぁ、そっちがダメならもう片方を徹底するだけだ。だろ?」
「もちろん。この回はそっちメインで行くよ」

ニヤリと笑みを浮かべ守備へと向かう。その後ろ姿に青年も笑みを浮かべている。

(逆に気付いてもらったことでますます迷宮にハマるかもな、可哀想に)



















莉愛side

「ムービングファストボールか」

この回は私からの攻撃。本来はネクストで準備をしてなきゃいけないんだけど、明里さんがソフィアさんを打てない理由がわかったらしく円陣に加わっている。

「手元で微妙にボールを動かしているんだと思います。だから詰まった当たりが多いんです」

ムービングファストボール。主にメジャーリーグで主流なストレートとして投じられているボール。通常のストレートとは異なり手元で微妙に動かすことで打者はミートしきれずに凡打の山を築くことができるらしい。

「ムービングなら対策は簡単だ。打席の一番前に立って変化しきる前に捉えてやれ」

球速がある分判断の時間は削られてしまうが速い球への対策は十分にしてきているので問題ない。スプリットへの対応が疎かになるかもしれないけど、ストレートの比率が高いためそちらを狙った方が有効だと思う。

「頼むよ、莉愛」
「了解です!!」

伊織さんからそう声をかけられ打席へと向かう。立ち位置は打席の一番前。ここなら変化する前に打つことができる。

(スプリットなら見送る……判別できればだけど……)

ただでさえもストレートが速い中で打席のさらに前に立つ。これは相当リスクもある行為。でも打つためにはこれしかない。

(まずは球筋を見て変化を確認する)

初球は案の定ストレート。これはあえて見送り1ストライク。なんだけど……

(動いてるの?これ)

何の変哲もないストレートにしか見えない。でも明里さんの言っていたことには説得力もあったし……

(信じるしかないよね)















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