第三十四章 世界が変わらずあることに
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自体を破壊するため。いずれくる平穏な無のために、禍根は残さない」
「ヒャハ。それこそ幼稚な夢だなあ。だから永劫を生きても、そんな赤ちゃんみたいな顔なんだよ。鏡を見たこと、ないのかね?」
「分かり合うつもりはない」
「いや、仮想世界の破壊だけならば、まあいいだろう。……だがまずは、自分をこの呪われた身体に生み出した世界に、令堂和咲などを生み出した世界に、人間どもに、まずは絶望を、死以上の恐怖を……」
「令堂和咲を作ったのはお前だろうに」
身体をぼこぼこ爆発させながら、シュヴァルツの顔に苦笑が浮かんだ。
それを黒服の三人が囲み見守っているという異常な図が、いつまで続くのだろうか。
「であればこそ! 恐怖の後に破壊し、本物の神としてわたしはこの世界を、宇宙を、支配する」
「宇宙は、終わりたがっているぞ。滅びたいのだ」
「大昔のAIによる疑似人格風情が、勝手な解釈をしちゃいけない。……滅びるなら、お前だけが滅びろ」
ぼそりとした至垂の低い声が、シュヴァルツの顔から漏れ……いや、違う……いつの間にか至垂の顔へと変わっていた。
至垂の声は、至垂の口から漏れたものだった。
と、認識をした黒服の三人アインス、ツヴァイ、ドライの行動は素早かった。至垂の上に乗る顔がシュヴァルツではなく至垂になったその瞬間に、三方から飛び掛かっていたのである。
至垂の魂を殺そうと。
支配権を再びシュヴァルツに戻そうと。
「やめておけ!」
至垂の低い声と共に、その土台たる蜘蛛の巨体がくるり一回転すると、アインスたち三人はみな一様に弾き飛ばされて壁に背を打ち付けた。
巨蜘蛛が、回りながら前足を払って三人を吹き飛ばしたのである。
三人は、壁から剥がれてふわり真下の床へと着地した。特にダメージを受けた様子もなく、すぐにまた三方から至垂を取り囲んだ。
至垂が、ふふっと笑った。
いや……その顔は至垂のものではなかった。
また、シュヴァルツの幼く端正な顔へと変わっていた。
「やめておけといっている。お前たちが束になっても、わたしたちには勝てないよ」
顔は間違いなくシュヴァルツであるが、意思たる声は、シュヴァルツと至垂が混じり合っていた。
アインスたち黒服の三人は、三方それぞれの位置に立ったまま、小さく頭を下げた。
「それでよい。お前たちとは、例え戯れにでも戦っている暇はないのだからな。……何故ならば……」
微笑みながら語るシュヴァルツであるが、その顔が一瞬にして険しく歪んでいた。
「きたか……」
蜘蛛の背から生えた至垂の身体、その上にいるシュヴァルツが部屋の端にある大きな扉へと顔を向けた。
向けた、
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