第三十四章 世界が変わらずあることに
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こえたのは。
突然の声であるが、シュヴァルツも、そしてアインスたち三人の顔色も、変化がないどころか視線すら微動だにしていない。
この声が聞こえることを、予想していたのだろうか。
至垂徳柳の声を。
「きみたちに奪われた生命なのだから、礼というのもおかしな話ではあるが。それでも、あえて礼をいおう」
声は、巨蜘蛛の背から生える身体の中から響いていた。
白銀の魔道着を着た、シュヴァルツの首が乗っているその身体の中から。
至垂の声、というより意思であろうか。
意思は、くくっと笑い声を漏らした。
「黒の管理人としての能力、遠慮なくいただくとしよう。……踏み台として、さらに進化し神へと近付くために」
至垂の意思は、嬉しそうにそう言葉を発した。
シュヴァルツは、面白くもつまらなくもなさそうにふんと鼻を鳴らした。
「こちらの台詞だよ、至垂徳柳。神への弑逆のためにも、お前の肉体はわたしがいただいて利用する。遠慮なくな」
「神を弑逆? なるほど、直接作られた存在であるお前たちには、これまでは試みる権限すらも制限されていたというわけか」
ははっ、と至垂は笑う。
「理解が早いな。理解したところで、お前の未来が変わるわけではないがな」
「黒の管理者は、お山の大将を気取るだけ。永劫の時を、ただ指を咥えて震えているだけだったわけだ。ははっ、これは傑作だ、はははっ」
「そこまでにしておけ!」
シュヴァルツの声と共に、シュヴァルツの頬が内側から爆発した。
槍状に皮膚が長く尖り突き出したのだが、次の瞬間にはもうなにごともなかったように幼くかわいらしい顔に戻っていた。
今度は白銀の魔道着が、腹部が、内側から爆発して布地が張り裂けんばかり膨らんだ。
ぐう、
シュヴァルツの顔が苦痛に歪んだ。
「無駄なあがきを」
シュヴァルツの口元、片端からつっと血が垂れた。
二人が内部で戦っているのである。
その後も、顔、目、頭、背中、胸、腹、腕、指、蜘蛛の身体まで、いたるところが柔らかなゴムを内から槍で突いたかのように長く尖って膨らんだ。
中で小さな人間が暴れているわけではない。
戦っているのは意思と意思。気の流れや爆発に身体が反応し、このような現象が生じているのだ。
「お前はこの身体で、こんな世界で、なにをしたいというのだ?」
シュヴァルツの意思が問う。
「愚問。……神!」
至垂の意思は、揺るぎなく、決意でも願望でもなく、当然にきたるべきと思う未来を声に発した。
「幼稚な夢は幼稚な夢のまま、見続けさせてあげたいよ。だが、悪く思うな至垂徳柳。お前の身体は、わたしのものだ。陽子結合式を解明し、まずは仮想世界、そしてこの惑星
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