第三十四章 世界が変わらずあることに
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のである。
頭から足先、全身がふっと溶けて、脱ぎ捨てた黒い衣服や下着だけを存在の痕跡として。
いや……
痕跡どころか、それそのものが……シュヴァルツそのものが、そこに存在していた。
首を切り落とされた至垂の死体に、いつの間にか新たな頭部が生じており、それはシュヴァルツの幼い顔そのものだったのである。
その口が薄く笑みの形を作ると、その下にある巨大な蜘蛛の全身がぶるりと震えた。
蜘蛛から生える白銀の魔道着は至垂徳柳であるはずで、実際他の誰でもないというほどに筋骨隆々であるが、その上に現在あるのはシュヴァルツの幼く小さい顔であり違和感この上ない。
その筋骨隆々の右腕が伸びて、床をがさごそ漁るように動く。先ほどヴァイスの光弾で切り落とされた左腕に、指先が触れる。掴み、引き寄せると、無造作に左腕の切断面へと継ぎ当てた。
押し当てた瞬間には、もう手の先指の先がぴくりぴくりと動いていた。
人差し指、中指、薬指、確かめているかのように、指が一本ずつ折り曲げられていく。
切り落とされて断面が土まみれになっていた腕が、ほんの一瞬にして繋がるどころか完全に機能していた。
蜘蛛の巨体が、動き出す。
地響きを立てながら、六本の足を器用に動かして体勢を立て直した。
死体が、動いた?
生き返った?
いや、新たな合成生物が誕生したというべきであろう。
見た目としては、至垂の顔がシュヴァルツにすげ変わったという一点だけであるが。
「力を、得た」
シュヴァルツの顔、その口元に、薄いがはっきりとした笑みが浮かんでいた。
2
「……世界を、破壊出来る力を……得た」
世界?
それはこの現実世界のこと?
それもあるだろう。
ただし、ここまでの経緯を考えるならば、彼女のいう世界とは仮想世界に他ならない。
喋っているのが、シュヴァルツであるならば。
最終目的は、この現実世界だ。
宇宙の終焉だ。
そのためにこそ仮想世界を破壊するのだ。
宇宙延命技術が、今後永劫に生まれることがないように、超次元量子コンピュータそのものを破壊するのだ。
魔法世界に起きた奇跡によって転造された存在である至垂には、そうした行為を制限するためのリミッターがない。
だからシュヴァルツは、至垂を吸収しつつ最終的には至垂に吸収されたのである。惑星AIが用意した防衛力に対して、反乱出来る力を得たのである。
力といっても、あくまでも権限問題をクリアしたに過ぎず、思うことままなるか否かはまた別の話ではあるが、とにかく土俵には立った。
と、その時である。
「礼をいおう。わたしを蘇らせてくれたことに」
どこからか声が聞
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