第三十四章 世界が変わらずあることに
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ライの三人、その死骸であろう。魔法陣の結界機能に封じ込められ 破壊の魔法から逃げ出すことが出来なかったのだ。
降り続けて、円状にえぐられた中心部へと立った。
目の前に、異様ともいえる巨大な塊がぐしゃぐしゃに潰れて、やはり炭化した状態で横たわっている。
確かめるまでもない。
巨蜘蛛である。
その背中から生えるのは、炭化した至垂徳柳の上半身である。
そして、その傍らには……
アサキは肩を震わせると、ぎゅっと目を閉じて顔をそむけた。
傍らにあるそれは、アサキが正視に耐えられずそむけてしまったのは、ぐちゃぐちゃに溶けて崩れている物体である。
この世界において明木治奈を形作っていた、しかし現在はもう原型を微塵も留めていない、溶け潰れてアメーバ状に広がっているただの肉塊であった。
「核が、もう存在していません」
ヴァイスも降りて、アサキの斜め後ろに立っていた。
抑揚の乏しい小さな声に、びくりアサキの肩が激しく震えた。
「それは、どういう……」
尋ねるまでもないことなのに。
誰かにはっきりと、いってほしかったのかも知れない。
現実は現実なのだということを。
でも、
「端的にいうなら、死んだということです。もう決して復活はしないということです」
それでショックがやわらぐものでは、なかった。
涙が出た。ぼろぼろと、涙がこぼれ頬を伝い落ちた。
「治奈ちゃん……」
差し違えたのか……治奈ちゃんは。
世界を、宇宙を、守るために。
仮想世界を、フミちゃんたちを、守るために。
守って、死んでしまったのか。
「治奈ちゃ……」
震える唇でまた名を呼ぼうとした、その時であった。
邪気の濃密に孕まれた、白く輝く球体がアサキを背後から襲ったのは。
だが、その球体は弾かれていた。弾かれた瞬間、遥か上にある天井が爆発した。
襲い掛かる光球を、アサキが弾き飛ばしたのである。横へステップを踏みながら、振り向きざま右の手刀で。
振り向いたアサキの前には、巨大な蜘蛛。
六本足の、全身が真っ黒に焼け焦げた。背中からは、やはり焼け焦げた人間の上半身が生えている。
至垂シュヴァルツである。
ぐしゃぐしゃに潰れて、皮膚という皮膚は炭と化していたはずなのに、死んではいなかったのだ。
治奈と刺し違えたはずなのに、滅んでいなかったのだ。
ぐふ
それは至垂なのか、それともシュヴァルツなのか、ぐじゃり潰れて真っ黒焦げになっている顔から、笑い声が漏れた。
ぶるっ、ぶるるっ、
巨蜘蛛が身震いすると、皮膚に亀裂が入っていた。
ぼろり、
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