第三十四章 世界が変わらずあることに
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らなくなった。
「思ったより手強いとは思ったが、しかしお前には手に余る力だったようだな。であれば、やはりここで殺しておくか」
至垂シュヴァルツの顔が変わっていた。
シュヴァルツから、白銀の魔法使い至垂徳柳の顔へと。
殴られ続けて肉は弾け飛んで、全身がひしゃげた巨大な蜘蛛。その背中から生えている、やはりぐしゃぐしゃに潰れた白銀の魔道着を着た上半身が、両腕を高々と上げた。
「リヒクーゲル・イーゼヒ」
至垂の口が、呪文を唱え始める。
彼女はアサキと同様に非詠唱の使い手であるはずだが、念には念を入れようということだろうか。
いや、そうではないようだ。高く上げた両手の間に生じた真っ白な球形は、見た目そのままであるがどんどん濃密なものになっいく。エネルギーが、どんどん練られ凝縮されている。
超魔法だ。
膨大な魔力と、制御するための精神力が必要であり、確実を期すために有声詠唱をしていたのであろう。
すっと両腕を広げると、広げる動きに合わせて光の球は大きくなった。
両肩から先を失った治奈は、その前に立ち、なすすべなく、でも逃げるわけにもいかず、はあはあと息を切らせている。
なおボロリボロリ全身を崩しながら。
巨蜘蛛の上の、至垂の上の至垂の顔が、喜悦の笑みに歪む。
「死ね!」
と、叫んだ瞬間、笑みに歪んだその顔の、目が驚きに大きく見開かれていた。
「待っとった!」
紫色の魔法使いの、怒鳴りにもにた叫び声。
彼女の足元を中心に、巨大な五芒星魔法陣が青白く輝いていた。
巨蜘蛛の身体も、その中にあった。
輝きの伝播を受けた治奈は、身に纏う真っ白な炎をさらに真っ白に燃え上がらせて魔法陣を蹴った。
雄叫びを、張り上げながら、
肉を、骨を、ぼろぼろと崩壊させながら、
自らの身体を、巨蜘蛛、至垂、シュヴァルツへと、突っ込ませたのである。
大爆発。
大激震。
彼女たちを捉えている大きな魔法陣から、柱状に輝きの粒子が噴き上がる。
その真っ白な炎にすべては包まれて、すべては溶けて、消えた。
6
浮かんでいる。
重力のまるでない中を飛んでいる。
身体、なのか。
心、なのか。
自分という存在は。
たくさんの、高層ビルが見える。
その上に、浮いている。
遥か眼下には、ごった返す、人や、自動車。
懐かしい世界。
自分の世界。
でもここはどこ?
東京?
方向転換し、ちょっとある場所を意識をしてみると、もう風景が変わっていた。
自分の暮らしていた町に、戻っていた。
目の前にあるのは、駅近くにあるお好み焼き屋。
戸をするり通り抜けて中へと入る。
そん
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