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八条学園騒動記
第六百七十二話 朝はそうなったその十三

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「しかし粛清した後で沈痛な顔をしておった」
「良心があったからですね」
「孤児を育てたりもしておった」
「人間味はあったんですね」
「職務を離れたらな」
 確かに秘密警察を率い粛清の責任者であったがだ。
「自分の手は罪に逃れているとも言った」
「人間ではあったんですね」
「ヤコーダも仲間に手出しはしようとしなかった」
 オールドポルシェビキ、文字通り古くからの共産党員でありレーニンから党に所属していた者達である。
「情があってな」
「秘密警察のトップも人間だったんですね」
「エジュフもじゃ」
「確か血まみれの小人ですね」
 野上君はその名を聞いて言った。
「粛清を主導した」
「この者も一人のスパイを処刑する為に何人も巻き添えにしてもいいと言ったが」
 それでもというのだ。
「賞賛されるとやや俯き照れ臭そうにしておった」
「自分の仕事がわかっていたんですね」
「多くの命を奪うことは事実だとな」
「例え党もっと言えばスターリンの命令でもな」
「人を殺す重みはわかっていましたか」
「拷問の酷さもな」
 それがソ連の為だと考えていてもだ、尚小人と呼ばれたのは彼が小柄であったせいである。
「認識しておったのじゃ」
「スターリンの命令で動いていただけですね」
「党と共産主義への忠誠は絶対でな」
「スターリンにもですね」
「そうであった」 
 メモを一字も漏らさず書き残した程であった。
「言うなら官僚や」
「ジェルチンスキーは共産主義者で」
「エジュフはそうでな」
「ヤコーダもそうしたところがあって」
「人間であった、エジュフは友人に何処となく逃げる様に言ったりもした」
 危機が迫っていることも言ったりした、それも彼が粛清される間際にだ。
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