第三十八話 嫌な奴もいないその一
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第三十八話 嫌な奴もいない
成海が歌うとだった。
他の面々も歌いだした、だが一通り歌うとだった。
一華は歌い終えてから言った。全員それぞれの場でマイクを回してそのうえで歌ってからであった。
「いや、もうかなり酔っていて」
「それでよね」
「歌うのもね」
かな恵に真っ赤な顔で応えた。
「もうね」
「辛いのね」
「かなりね」
こう言うのだった。
「飲み過ぎたわ」
「何言ってるの、飲むのはこれからよ」
かな恵は白ワインが並々と入っている大ジョッキを手に一華に話した。
「一華ちゃん全然飲んでないじゃない」
「そうかしら」
「私から見たらね」
「かな恵から見たらでしょ、というかね」
一華はかな恵が右手に持っている大ジョッキの中のワインを見て言った。
「かな恵それ何杯目?」
「三杯目?」
「四杯目だろ」
成海が横から言ってきた。
「もう」
「そうだった?」
「お前三杯までとか言ってなかったか?」
「そうだった?」
「そうだよ、そのジョッキ大体五百入るだろ」
「ミリリットルでね」
「流石にビール用とは違うけれどな」
こちらは一・八リットルである。
「それでもワインだからな」
「飲み過ぎ?」
「ああ、四杯になるとな」
それこそというのだ。
「だからな」
「もうこれ飲むなっていうの」
「それで止めろよ」
こう言うのだった。
「いいな」
「そうするわね」
かな恵は成海の言葉に頷いた。
「それじゃあ」
「そうしろよ、仕方ねえな」
成海はやれやれといった顔でこうも言った。
「本当に」
「悪いわね」
「ああ、それで歩けなくなったらな」
成海はかな恵がそうなった場合も話した。
「家まで連れて行ってやるよ」
「いつも悪いわね」
「いいさ、幼馴染みで付き合ってるからな」
成海は今度は笑って話した。
「それじゃあな」
「それでいいの」
「そうさ、まあ俺も飲んでるけれどな」
見れば顔は真っ赤になっていて表情もだらしないものになっている、成海はそのことを自覚していた。それで言うのだ。
「お家まではな」
「送ってくれるのね」
「同じ棟で同じ階だしな」
このこともあってというのだ。
「そうするな」
「じゃあお願いね」
「ああ、それでもお酒はな」
「これで終わりね」
「そうしろよ」
「かな恵ってお酒入るとこうなのよね」
富美子は腕を組んで眉を顰めさせ首を右に捻って述べた。
「限界まで飲んで成海っちに送ってもらうのよね」
「これじゃあ成海っちの方が世話女房よね」
一華も言った。
「もうね」
「そうよね」
富美子は一華に返した。
「普段はかな恵がだけれど」
「酔うと成海っちがよね
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