敢闘編
第五十四話 帝国領侵攻
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「可能性の話ではありますが、補給担当としては最悪の条件を想定せねばなりませんので」
「充分だ。ありがとう、准将」
シトレ親父が強引に質疑応答を打ち切った。くそ、いいところで打ち切ったなあ。もっと見ていたかったんだけど…。
「ウィンチェスター中佐、笑う余裕があるのならこれ以降は君が説明したまえ」
う…ヤンさん、笑うのを堪えるのは止めてください。
「はい、説明させて頂きます…確かに占領する星系はアムリッツァ星系のみですが、これにはちゃんとした理由があります」
まず、帝国本土が侵された、という心理的衝撃。全宇宙を統べる神聖不可侵のゴールデンバウム王朝、という建前がある以上、帝国にとっては一つの星系が占領されただけでも大問題なのだ。そしてこちらの侵攻がどこまで続くか、という恐怖。これは帝国政府のみならず、貴族にとって恐るべき事態だ。特に大貴族は星系単位、惑星単位で領地、荘園を持っているから、そこにこちらの侵攻が及べば、彼等にとっては一大事になる。彼等は自らの政府を非難するだろう。それと同時に正規艦隊規模の艦隊戦力を保持している大貴族は我々の撃退を試みるかもしれない。確かブラウンシュヴァイク公は六万隻、リッテンハイム候は五万隻、という途方もない兵力を維持していた筈だ。しかし、辺境、それも同盟領に近い星系に領地を持っている貴族や自領の警備兵力を持たない貴族はどう考えるだろうか。原作やアニメではラインハルトが焦土戦術を用いた。帝国政府の訓令があったとはいえ、ほぼ無抵抗で同盟軍の進駐を受け入れている。無抵抗で占領できる事は我々にとっては理想的だが、その結果彼等を食わせなきゃいけないという責任が生じる。ギャバン准将の言った通り我々は帝国の専制政治からの解放軍という立場だからだ。だが現実問題として彼等全てを食わす事は出来ない。ではどうするか。進出する地域を減らすしかない。たとえ此方の占領する星系が一つだけだとしても、帝国軍は必ず奪還の為の軍を起こす。イゼルローン回廊を失い、自国の星系まで取られたとあっては神聖不可侵の建前すら危うくなる。その討伐軍を我々が撃ち破り、帝国政府を頼むにあらずという事態が起きれば、帝国は瓦解しかねないのだ。帝国政府と門閥貴族が一致団結する、という事態も怒り得るが、余程の事がない限り統制のとれた行動は取れない筈だ。なぜなら帝国軍は命令系統が一本化されているが、貴族達はそうではないからだ。貴族達には常に利害関係が付きまとう。戦況次第では貴族達は自領の保護に走り中立化するだろう。帝室の藩屏と彼らは言うが、本当にそうなら帝国政府に協力して同盟をやっつけて、とっくにこの戦争は終わっているはずなのだ。
「…まずはアムリッツァを橋頭堡とし、根拠地として固めます。資金と資源を投入し、アムリッツァに住む帝国人に同盟が自由の国であると教化し
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