第三十七話 夏の食べものその十二
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「もっとね」
「負けて欲しいわね」
「そうよね、今二十五連敗でしょ」
「いや、二十六連敗よ」
富美子は自分のスマートフォンで試合結果を見て話した。
「横浜に二十六対零で負けたわ」
「ああ、そうなの」
「一安打しか打てなくてエラー五つで」
「相変わらず弱いわね」
「いや、凄い負け方ね」
「巨人らしい恰好悪い負け方ね」
「ざま見ろよ」
富美子は笑ってこうも言った。
「本当に巨人が負けるとね」
「気分がいいわね」
「そうよね」
「いやあ、お酒美味しくなったわ」
理虹は紅茶サワーを飲みつつ笑顔で話した。
「一気にね」
「そうよね」
富美子はレモンサワーを飲みつつ理虹に応えた。
「巨人が負けたら」
「これまでも美味しかったけれど」
「尚更ね」
「巨人はもっとね」
「どんどん負けて欲しいわね」
「昔は強かったらしいけれど」
V9なぞという日本ひいては世界のスポーツ史に決して消すことの出来ない忌まわしい汚点を刻むまでにだ。
「今やね」
「ああいうのをこう言うのよね」
かな恵もにこにことして話した。
「驕る平家は久しからず」
「まさにその通りね」
一華はたこ焼きを食べながら応えた。
「巨人は」
「ずっと盟主ぶっていてね」
「それが今ではね」
「万年いや億年連続最下位でね」
「暗黒時代満喫よ」
「そうなってるわね」
「お金のある時に補強ばかりしてね」
他チームから選手を掠め取ることばかりしていてだ。
「そうしてね」
「それでよね」
「今やね」
「球界の恥ね」
「最弱球団よ」
「元盟主ね」
「自称ね」
一華はこの言葉も忘れなかった。
「そうだったのがね」
「ああだからね」
「驕る平家は久しからずね」
「そう思ったわ」
「その通りね」
一華はかな恵のその言葉に全面的に賛成だった。
「実際平家ってあんなに酷くなかったらしいけれど」
「穏健だったのよね」
「酷いのは頼朝さんでね」
「あの人は本当に冷酷非情だったけれど」
自分の敵ではなく少しでも問題があるとみなすと容赦なくその一族まで同じ源氏までそうした、それが源頼朝という男だった。
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