第三十七話 夏の食べものその七
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「それでだよ」
「どうしようもなかったのね」
「選手を育てても」
「それが出る前に」
「辞めたから」
そうなってしまったからだというのだ。
「残念だよ。後でイッちゃんが言う通りに楽天の監督の時はよかったけれど」
「クライマックスにも出て」
「そうなったけれど」
それがというのだ。
「阪神の監督だった頃は」
「どうしようもなかったわね」
「打線は全然駄目で」
達川は残念そうにさらに話した。
「助っ人もね」
「ピッチャーはよくても」
「肝心のバッターが全然で」
「勝てなかったのね」
「何しろバース二世とか言われても」
あの偉大な助っ人の様にというのだ。
「それでもね」
「皆駄目だったのよね」
「そうだったからね」
「あれよね、グリーンウェル」
富美子が極めて忌々し気にこの名前を出した。
「もう詐欺とか言う」
「あれは前だぞ」
越智が突っ込みを入れてきた、そうしつつカルピスチューハイを飲んでいる。
「野村さんよりもな」
「そうだったの」
「吉田さんの頃だ」
吉田義男である、かつて牛若丸と呼ばれ巧打と俊足何よりも抜群の守備力で知られた人物である。尚牛若丸という通称は小柄で軽快な動きだったからだ。
「あの人の頃でだ」
「野村さんの頃じゃないのね」
「そうだ、しかし詐欺だっていうのはな」
越智は極めて忌々し気に言った。
「事実だな」
「高い契約金と年棒払って」
「中々来ないでな」
「それでやっと来たらと思ったら」
「すぐに帰って引退だ」
「本当に詐欺よね」
「国際詐欺と言われている」
今だにである。
「俺も確信している」
「誰が見てもそうよね」
「やたら怪我をしてだ」
「中々来なくて」
「そして来たと思ったらすぐに帰ってだ」
「怪我でよね」
「引退した」
この有り得ない顛末は伝説にすらなっている。
「怒ったファンの人達が何だとなった」
「それでその時産まれていない私達まで知ってるのね」
「俺は親父から怒った顔で話された」
「ああ、お父さん阪神ファンで」
「最低最悪の助っ人だったとな」
「文句なしに最悪よね」
「四億円以上払ってだ」
年棒と契約金を合わせてだ。
「それでだ」
「四月の終わりまで来なくて」
「ゴールデンウィークの間に少し活躍してな」
「すぐ帰って引退じゃあね」
「詐欺と言われる筈だ、あとメジャーにいた頃と顔が違う」
「そうなの」
「別人じゃないのか」
越智は真顔で言った。
「俺はそう思った」
「そんなに違うの」
「こんな顔だった」
越智は自分のスマートフォンを出して彼の画像を出した、そのうえで富美子に対して真顔のまま話した。
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