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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第五十三話 謀多ければ…
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「参謀長、ご心配なく…悔しい限りですが、今回の作戦、お見事でした。どなたが立案されたのですか?」
ミューゼル少佐の視線はヤンとウィンチェスターの二人に交互に向けられていた。…なんだその顔は、ヤン!
「シトレ閣下ですよ、少佐」
「…そうなのですか、ウィンチェスター中佐。小官は貴官かヤン中佐のどちらかではないかと思っていました」
「…何故です?」
「エル・ファシルの奇跡とブルース・アッシュビーの再来…その両者の上に立つ者なら、その才幹に期待するのは当然、そう思ったからです。器の小さい上官なら、貴官等の功績を妬みこそすれ、自らの幕僚には呼ばないでしょう。経歴を見るとシトレ閣下は将の将、部下に権限を与えそれを使いこなすタイプの方の様に思えますので」
…幼年学校首席、この若さで少佐というのも頷ける。中々鋭い観察眼を持っているな…。
「我々の事を調べたのですか?」
「貴官が私の事を調べた様に」
「買いかぶり過ぎですよ。私もヤン中佐も閣下のお手伝いに過ぎません」
「…そういう事にしておきましょう」



11月28日17:30
自由惑星同盟軍、総旗艦ヘクトル、第二作戦会議室、
ラインハルト・フォン・ミューゼル

 「ではもう一つ。貴方方は帝国本土に攻め込むおつもりか。お答え頂きたい、ウィンチェスター中佐」
「…軍の機密に属しますので答えられません」
「事ここに及んで軍機とは…まもなく回廊内に増援八個艦隊が到着する筈だ。違いますか」
「…此処に居る三名共、それについて答える権限がありません」
「帝国本土より通報がありました。叛乱…いや同盟軍が此処に増援を寄越すと。規模は八個艦隊であると」
止さないか、という参謀長の声がする。分かってはいる、分かってはいるがこの男の顔を見ていると不安なのだ、何もかも見透かしている様な目。初めて出会った時の”お前の事を知っているぞ”と言わんばかりの語り口。
いつか俺達の前に立ちはだかるのではないか…そう思ってしまうのだ…。
「…申し訳ありません、少し熱くなった様です」


11月28日17:35
自由惑星同盟軍、総旗艦ヘクトル、第二作戦会議室、
ヤン・ウェンリー

 終始穏やかなウィンチェスターと、その蒼氷色の瞳に炎を灯したミューゼル少佐。私は彼には初めてお目にかかるが、何やら因縁のありそうな二人だ。あまり巻き込まれたくはないが…巻き込まれてしまうんだろうなあ、ではなくて既に巻き込まれているか…。
ヤマト・ウィンチェスター中佐。まぐれ当たりの私とは違って間違いなく同盟軍を背負って立つ逸材だ。その彼が天才と評するミューゼル少佐…次世代の帝国軍は、か…。ウィンチェスター、君だって同じだ、近い将来の同盟軍は君を中心に動くだろう。それをすぐ側で見られるというのは果たして幸せなのか不幸
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