第三十七話 夏の食べものその六
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「口は悪いけれど」
「実は凄くいい人なのよね」
「ライバルだった西本幸雄さんのことを尊敬していたし」
「ええと、阪急や近鉄の監督だった」
「あの人とはずっと敵同士だったけれど」
オールスター以外で一度も味方同士だったことはない。
「お互い認め合っていてね」
「尊敬していたのね」
「野村さんはね」
そして西本も野村を認めていたのだ。
「そうだったんだ」
「まさにライバル同士ね」
「長嶋さんのこともあれこれ言ったけれど」
野村の野球人生のもう一人のライバルであった彼ともだ。
「カリスマ性は認めていたから」
「それ認めるってことは」
「本音ではね」
「好きだったのね、長嶋さんも」
「向日葵と月見草だったけれど」
これも野村が言ったことだ。
「向日葵に負けてないね」
「凄い月見草よね」
「そうだよね」
「それだけのものよね」
「野村さんはね。というか向日葵もいいけれど」
長嶋がそれだと野村自身が言ったその花もというのだ、その名前の通り太陽の象徴とされることもある。
「月見草もいいよね」
「富士には月見草がよく似合うね」
一華は無意識のうちにこの言葉を出した。
「そうも言うし」
「それって確か」
「太宰よ」
太宰治、この作家だと答えた。
「富嶽百景ね」
「それだよね」
「そうも言うしね」
「月見草も悪くないよね」
「長嶋さんのカリスマは確かに凄いけれど」
達川はこのことは否定しなかった。
「けれど野村さんもだよ」
「かなり凄い人よ」
「そうだよね」
「現役時代も大スターだったのよね」
「そうだよ、監督時代だって凄い人気だったしね」
「そうよね」
「長嶋さんに負けてなかったよ」
現役時代も監督時代もというのだ。
「巨人はテレビと新聞で一気に洗脳したけれど」
「それでもよね」
「野村さんはパリーグの大スターだったよ」
「何かパリーグ昔は人気なかったっていうけれど」
「それでも人気はあったし」
このことは事実でというのだ。
「注目されててヤクルトの監督になって」
「もっと人気が出て」
「凄い月見草だったよ」
「向日葵に負けない」
「そうだったよ、ただね」
ここでだ、達川は。
少し苦笑いになった、そうしてジントニックを一口飲んでからカシスオレンジを飲んでいる一華に話した。
「阪神の監督だった時は」
「あの時阪神弱くてね」
「もう毎年最下位でね」
「野村さんの頃もよね」
「何しろ打てなくて」
その打てなさは攻撃時間の速さにも出ていた、あまりにも拙攻で攻撃がすぐに終わってしまったのだ。
「相変わらずピッチャーはよくても」
「打てなくて負けて」
「三年連続最下位だったよ」
「暗黒時代だったのよね」
「それが残念だ
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