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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
瞳の奥に潜む影
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して駆け引きをしてきた身だ。くるりと体を反転させると、

「それじゃ要らない」

 と冷たく告げ、そのまますたすたと歩き出す。と、すぐさま後ろから声が飛んできた。

「ゴメンゴメン、冗談ダ。……何、ちょっとある情報の調査でここに来たら、何やらダイヤの原石二人が戦ってるのを見つけて、顔を覚えておいてもらおうと声を掛けたのサ」

 「よろしく頼ム」と不敵な笑みを崩さずに言い終えたアルゴは、慣れた手つきでフレンドを申請してきた。情報が知りたかったら、自分にメールしろ、ということなのだろう。
 マサキは特に迷うこともなく承諾ボタンを押した。

「よし、登録完了ダ。……それじゃあお近づきのしるしに、さっきのファンファーレが何なのかを教えよウ。メインメニュー・ウインドウを出して、ステータス・タブに入るんダ」

 マサキは言われたとおりに指を揃えて振り下ろし、開かれたウインドウの中から指示された場所へと入る。すると、そこに表示されている一つの数字が目に留まり、「なるほど」と小さく呟いた。

「気付いたみたいだナ。そう、さっきのファンファーレはレベルアップを知らせるものダ。……ついでに、その下を見てみるといイ。ボーナスステータスが振り分けられるようになっているはずダ」

 マサキが視線を下に向けると、確かにボーナスステータスが3あった。マサキはそれを敏捷に2、筋力に1振り分け、ウインドウを閉じる。

「よし、それで終わりダ。次からは300コルだから、しっかり覚えておくんだナ」

 マサキはここで顔を上げ――、そしてようやく気がついた。自分たち三人を、真っ暗な影が取り囲んでいるということに。

(俺としたことが、警戒を怠ったか)

 小さく舌打ちをしつつマサキが辺りを見回すと、二人もそれに気が付き、悔しそうな顔を浮かべる。が、すぐに表情を引き締めると、互いに背を向けて武器を構えた。

 視界の端に映る小さな光点を見ながら、マサキは不思議に感じていた。先ほどのオオカミなら、こんな回りくどいやり方ではなく、正面から襲ってきたはずだ。それに、まるで絶対的なリーダーからの命令を受けているかのように、その動きには無駄がなく、統率も取れている。
 ――さっきまでとは、何かが違う――

 マサキは直感が告げる危険信号を頭の中で感じながら、その違和感の正体を探そうとして――、見つけた。

「おい、アルゴ。……どうやら俺たちが最初に買う情報は、アイツに決定したみたいだ」

 マサキが顎で示した先には、《ナイトウルフ》の二倍はあろうかという巨体に影をそのまま具現化させたかのような黒い毛並みを纏ったオオカミが《ナイトウルフ》五体を従え、唸り声を上げながら三人を強く睨みつけていた。

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